第338話 神様はなにができますか
憔悴してるみたいな
今の私たちに出来ることってないから、丸投げしているのはたしかなんだけど。
『神は確かに万能で不老不死でやりたい放題な存在ではある。だが、今はまだ神格を持っただけのただの人間。神となるのは二つの世界で人としての生を終えてからだ。間違っても暴飲暴食をして健康を損ねるような真似はやめよ。神となってからいくらでも楽しめ』
「うぅぅっ、食べ飲み放題ができないのね」
『そこそこにしておけということだ』
どちらの世界でも長くて八十才くらいで人生が終わるだろうから我慢しろ。
そう言われてフロラシーさんはその時々でメニューにも流行りがあるのにと恨めしそうな眼をする。
コース料理だと嫌いな物があったりするから、好きな物をお腹一杯ではなく丁度いいだけ食べられる食べ放題はお気に入りだそうだ。
決してフードファイターではないと主張された。
『ところで一つの世界を創造し管理する者として、やって良いことといけないこともあるのだ。一番にしてはいけないことはこの世界の女神のように放置することだ』
うちの神様はできるだけ自然な進化が出来るように見守る方針だけれど、やはりところどころこれはと言うところで手を入れているんだそうだ。
夢や単純な出来事でヒントを与えたり、少しずつゆっくりと地形を変えたり。
ただあちらの世界はここと違って星という形を取っているから、それだけ多くの文明と人がいる。
丁寧に世話はできないのだと。
『その点ここは楽だぞ。スクロール一枚分だからな』
目の前に私たちが見たあの古地図が現われる。
東西南北、やはりエグい描かれ方だ。
これ、変えられないかなあ。
『駄女神の基礎の世界作りでここはほぼ完成されている。これ以上の発展はない。文明開化も産業革命もない。今のままだ』
「それってルーたちがやることがあるのか」
『まあ、ないな。だが今まで存在しなかった神の存在や教理を使って穏やかな世界を作ることはできる。他にも出来ることはあるぞ』
機械とか電気とか蒸気とかは作れないけれど、音楽や絵画と言った芸術系はまだまだ伸びしろがあるそうだ。
ベナンダンティのおかげでバイオリンはなくてもピアノはある。
文学もある。
瓦版は帝国以外ではあまり広まっていないけれど、それは吟遊詩人たちが代わりを担っているから、それを援助する形で広めてもいい。
やれることはいくらでもあると言う。
『神の概念を確率して信仰心を集めねば神力が増えぬ。必ずしなければならないのはそれくらいか。それと、飽きたら人間の赤ん坊に生まれてみると言う手もある。もう一度家族を作って、人の気持ちを思い返すのも良い』
神としての上から目線に慣れてしまうと、人間たちの細やかな感情を忘れてしまいそうになるらしい。
だから神様の中には時々人間の人生を送る者もいるそうだ。
自分の作った世界にしがみついている神たちと違って、ちゃんと目をかけられている世界は、人間の寿命くらい目を放しても問題ないのだとか。
それも人間たちの自主性を重んじているからで、若い神様たちは手の抜きどころがわからないらしく、それで手っ取り早く他の世界から魂を引き抜いてくるのだそうだ。
『もっと自分の子供たちを信じれば良いものを、もっと先、さらに先と欲張るからだ。いつまでも手を引いてやらねばならない幼子ではないのに』
這えば立て。
立てば歩めの親心。
なんて優しい気持ちではなくて、育成ゲームのプレイヤーのような感じらしい。
『それより大切なのはベナンダンティの立ち位置だ。なにやら面倒臭いことになっているようだな』
「めんどくさい ? 」
『私がしたのは愛娘の助けになるような眷族神を選ぶところまで。だが、この世界はどこまでも主神となるお前たちに甘いとみえる。色々とまあ、楽しいことになっているぞ』
めんどくさい ?
楽しい ?
なんだろう。
『本来ならば
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