第337話 みんなも何かになりました
『何を勘違いしている。お前たちもだ』
兄様たちがピシりと固まった。
「俺たちが・・・なんだって ? 」
『だから、お前たちはあの二人の眷族神になった。これからも今までのように二人をしっかりと支えてゆくのだぞ』
さっきまで晴れ晴れとしていた兄様たちの顔が見る見るうちに青くなる。
そりゃあ自分たちは無関係と思ってたんだもんね。
そうか。
兄様たちも私たちとずっと一緒にいてくれるんだ。
なんかホッとする。
でも兄様たちはそうではないみたい。
「それは、俺たちも神の一柱になったってことか・・・」
『お前たちも言っておっただろう。見捨てられない、どこまでもついていくと。望み通りにしてやったつもりだが』
「言った。言っちまった。言わなきゃよかった。なんで言ったんだ、俺 ! 」
エイヴァン兄様が頭を抱えて地面に打ち振す。
ディードリッヒ兄様もウソだろうと顔を歪めている。
「まさか、一生ルーの尻拭いをする破目になるとはっ ! 」
『一生ではない』
「一生じゃない・・・」
『永遠だ』
「さらに
えっと、兄様たち。お話ししているのは神様ですよね ?
そんなタメ口で罵らなくても・・・。
「勘弁してくれ・・・。俺たちはやっと嫁さんもらえるんだぞ。なんだって死に別れたら二度と会えない設定なんだよ。せめて次の世でも一緒になろうとか夢くらい見させろよ ! 」
エイヴァン兄様ったらロマンチック。
って言うか、結婚するんだ !
お相手って誰 ?!
そしたら二人が指さした先にはナラさんとフロラシーさんが手を挙げていた。
「あらあら、そういうことだったのね」
「魔王様と『暗闇参謀』がご夫婦って。なにか物語が出来ないかしら」
「いいわね、それ。『ルチア姫の物語』のスピンオフなんてどうかしら」
「心を通わせながらも距離をおかなければならない葛藤」
「二人だけの時にだけ見せる甘い雰囲気。絶対受けるわよ」
皇后陛下とお母様が楽しそうに話してる。
ナラさん、影の参謀と言われていたのは知ってるけど、いつの間にか二つ名がついていた。
もともとのお仕事がイベント会社の社長さんだし、『大崩壊対策委員会』でエイヴァン兄様の隣で色々とアイデアを出してたのは王城の人たちは知っていたからね。
「ディー兄さんの嘘つきっ ! 」
ここに来てから現状認識が出来ずに沈黙していたアンシアちゃんが叫んだ。
「お付き合いしてないって言ってたのにっ ! 」
「あの時はまだ付き合ってなかったんだよっ ! 」
「たった半年もたたないうちに婚約っ ?! 」
「親に挨拶もなしに婚約なんてするかっ ! 結納交わすまではただの恋人だっ ! 」
『だから、私の話はまだ終わっていないと言うに』
神様でも溜息をつくんだ。
『どれだけ私を非情な神だと思っているのだ。その辺りの機微くらいは弁えておるぞ』
神様がそう言うとナラさんたちの身体が一瞬だけ光った。
『お前たちは夫婦神としてこの二人、
「あら、もしかして私たちも神様になるの ? 」
「困ったわ。浮気とか離婚とか出来ないわね」
「なに言ってんだっ ! するのか、浮気っ ! 」
するわけないじゃないのとフロラシーさんがコロコロと笑う。
あ、これって兄様たちが尻に敷かれるのって決定路線 ?
「ナラさん、フロラシーさん。ごめんなさい。私たちに巻き込んでしまって」
「おい、俺たちは巻き込んでもかまわないってことか」
「アハハ、別にいいわよ。気にしないで」
フロラシーさんはそう言って手をヒラヒラさせる。
「考えてもみてよ。神様になったってことは全知全能、不老不死よ」
「時間だってたっぷりあるし、研究でも技能でも好きなだけ研鑽できるわ。ねえ、フロラシー」
「ええ。おまけに病気とか体重とか心配しなくていいし。食べ飲み放題、ブラボー ! 」
『違う。神とはそのようなものではない。くっ、これは人選を間違えたか』
神様の声がなんだか震えてる。
凄いわ、神様を狼狽させられるなんて。
さすが、出来る大人の女性は一味違うなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます