第305話 閑話・バレエ公演のその後・その2

とっても素敵なレビューいただきました。

感激しました。

白雪❆様、ありがとうございます !


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あ新聞

 岸真理子記念バレエ団新人公演。

 目を見張る舞台だった。

 演技、表現、技術。

 どれをとっても素晴らしい。

 団員の若い二人を支えようという気持ちも伝わってきた。


い新聞

 舞台未経験の子供になにが出来るのかと言う下馬評を覆した。

 特に二幕始めの切ない表現は、キトリの父親が金目当てでなく、娘の幸せを望んで貴族との結婚を選んだという布石になった。


う新聞

 この二人にコンクールは必要ない。

 切り取られた踊りにはこの演技力はもったいない。


え新聞

 前回の批評撤回します。

 ごめんなさい。



【岸真理子記念バレエ団】ルーちゃんとアルくんの素敵な仲間たち【集まれ】


 ここはルーちゃんこと佐藤めぐみさんとアルくんこと山口なおとくんを語り合う場所です。

 批評はオッケー。批判はアウト。

 二人がより良いバレエ生活を送れるように応援しましょう。


************************************************


1:

 スレ立てました。

 皆さん、盛り上がっていきましょう !


2:

 スレ立てありがとう。

 早速だけど、見た ?


3:

 ルーちゃんのテレビでしょう。

 見た見た。

 びっくりした !


4:

 毎日レッスンするようになったのは去年の秋からで、それまでは週三でしょ ?

 コンクールの前も一日増えただけなんて。

 それも個人レッスンはなし。

 よくそれであんなに踊れるの ?

 一日休めばって言われてるのに。


5:

「夢の中でもお稽古する子だからって」団員さんの言葉もよくわからない。


6:

 なんか隠された謎があるような気がする。

 それと「トウシューズに画鋲事件」。

 びっくりした。


7:

 まさかリアルであんなことがあるなんて思わなかった。

 女って怖い。


8:

 やめてよ。

 団員さんたちはやってない。

 自分たちの実力に奢った子供の暴挙よ。


9:

 でも配役発表の時期を考えたら、誰かは特定できちゃうわよね。

 あの頃に止めた子、あそこから移ってきた子。


10:

 それをわざわざ入れたって事は、多分あの子たちは約束を破ったんだよ。口外しないとか悪口を言わないとか。


11:

 あー、俺わかった。

 あの子たちだ。


12:

 もしかしてネットとかでルーちゃんの悪口書いてた子 ?

 あれ、アカウント削除になってたわね。


13:

 実力のある子たちだっただけどね。

 残念。


14:

 くだらないな。

 そういうのは裏でやってくれ。

 あ、俺はあそこにグッときたぞ。

 友達が死んで落ち込んでたってとこ。


15:

 あのテレビ局の社員のお兄さんだったってやつね。

 不思議な出会いって言ってた。

 そんなご縁もあるのねえ。


16:

 それと楽屋詣でに来た人たち。

 岸真理子のライバルって言われてた人。

 あの人が数十年ぶりに表に出たっていうか、幻のバレリーナって言われてたよね。

 私、初めて見た。


17:

 大絶賛だったよね。

 あの人までバックについたら怖いものなしでしょう。

 あと、人間国宝って言われてるお坊さんまで。

 自分の愛弟子だって言ってたけど、ルーちゃんてミッション系の学校に通ってるよね。


18:

 引き出し多過ぎ!


19:

 それが演技にどう反映されるか。

 そう言えば夜の部の映像がなかったな。

 見たかったんだけど。


20:

 バレエ団としては表に出したくないわよ。

 誰かこっそり撮ってたら別だけど。

 あの超絶技巧の演技、もう一度見たかった。


21:

 それは言える。

 夜の部を見れた人、その思い出を今度語りつくして。


22:

 まかせろ。

 いくらでも語れるぞ。

 あと気になったんだが、ルーちゃんて自己評価めっちゃ低くないか?


23:

 確かに。

「私なんかが主役なんて、小さい頃からプロを目指して努力している皆さんに申し訳ない」って。

 やっぱり例の事件が引っかかってるのかな。

 それでも精一杯の舞台を見せたいって、健気だなあ。

 庇護欲をかき立てられるタイプ。


24:

 なのに踊りだすとこう、凄い存在感とインパクトがある。

 多分だけど、コールド群舞じゃあ悪目立ちする。

 サブキャラでも主役を食うかもしれない。


25:

 とにかく素のキャラと踊りのギャップがすごい。

 萌えるというのはこういうことか。


26:

 バレエ板以外でも話題になってる。

 今、この瞬間に。


27:

 え、どこ ?


28:

 ミュージカル板。

 あの子たち誰って感じで。


29:白き翼

 その質問にお答えしましょう。


30:

 誰だ  !


31:

 誰だっ !


32:

 誰だぁぁぁぁっ !

 ・・・これも定番になってきたな。

 お庭番の白き翼だな。

 よし、報告せよ。


33:白き翼

 はい。

 今日の「白貴族・都立高校バージョン」の千秋楽に二人が現れたからです。


34:

 白き翼、ご苦労様。

 私もそれ見ていたから報告するね。


35:

 お願いするっす。


36:

 千秋楽には元になった高校生が全員招待されたのよ。

 その中にアルくんとルーちゃんもいたの。


37:

 ほう。


38:

 で、カーテンコールで彼らが舞台に招かれたりわ。

 そけだけでも十分盛り上がったんだけど、生徒たちが「ルー」コール。

 一人客席に残っていたルーちゃんが、劇場の人に舞台に上がるよう言われて。


39:

 続きを、早く続きを。


40:

 真っ赤な薔薇の花束を抱えたルーちゃんが舞台に上がったら、それまで指笛ふいたり大騒ぎしていた高校生がピシっと召使の礼を取ったの。

 執事服きている出演者よりも完璧な侍従って感じで。


41:

 シーンと静まり返った中、ルーちゃんは持っていた花束を主演女優に渡して、優雅に膝を折って礼をしたらスッと後ろに下がったわ。

 一瞬で目立たなくなった。

 で、盛り上がったまま終演。

 それが今日。

 テレビカメラ入ってたから、もしかしたら明日の芸能コーナーで紹介されるかも。


42:

 よし、全局録画予約入れる。

 見たかったな、それ。


43:

 素敵だったわ。

 二人のこと知ってた子もいたみたいで、それでミュージカル板でばれたんじゃないかな。

 で、追っかけてみたら、報告通り二人は手を繋いで消えていったわ。


44:

 健全な少年少女だな。

 良きかな良きかな。


45:

 最終公演の放送まであと十分。


46:

 終わったらまた集まろう。


47:

 再生しながら語り合うって、どう ?


48:

 いいね。

 楽しみだ。


49:

 祭りじゃ、祭りじゃ、ルーアル祭りじゃ。



「ではこのような形で手打ちということでよろしいですか」

「ええ、このあたりで終わるのが最良ということですか。書類はこちらでご用意させていただきますので、出来上がりましたらメールに添付してお送りしますのでご確認下さい」

「そうですね。その後正式な書類にするということで」


 向かい合った四人が握手する。


「お手数かけて申し訳ない」

「いえ、例の『画鋲事件』の方をお任せしますから」

「はは。あれはまったくね。今時の事例ですよ」

 

 男たちの二人はバレエ団の、残りはアルの実家の顧問弁護士だ。


「まったく、こんなのは初めてですよ。大人が未成年を恫喝して舞台にたたせるなど。まあ、それだけ欲しい才能だったとは思いますが」

「やり方がまずかったですね。子供の恋心を利用するとは、芸術家は時に一般市民とかけ離れたことを考える」


 トントンと書類を揃えてカバンにしまう。


「ですがあのお嬢さんも甘いというか、優しい子ですね。もう関わらなければいいのでお稽古を続けて下さいとは。本来なら慰謝料請求する案件なんですが」

「・・・彼女たちはどうなります ? 」

「海外留学するそうですよ。それだけの資産のない家は遠くに引っ越すそうです。親はバレエを止めされようとしたらしいでが、お嬢さんの和解の条件がバレエを続けるでしたからね」

「・・・続けてきた努力を無駄にしないで欲しいということでしたが、優しさは残酷な結果も生みますね」


 プロになりたいという将来の夢。

 それを適えて欲しいという望み。

 だがこの件はネットで話題になり、犯人捜しが始まっている。

 海外に出る子はまだいい。

 だが国内に残る子は・・・。


「いっそ止めてしまえれば楽だったでしょうね」

「ええ。止めることは出来ず、かといって問題を起こした子を雇うバレエ団はない。それでも迎えたいというほどの才能でもない。針の筵の人生ですよ」


 海外留学を選んだ娘たちも、日本に戻ってきても活躍する場はない。

 海外で踊るしかない。

 その地のバレエ団に入ることが出来れば、だが。

 才能の塊、天才。

 バレエ界に突然現れた少女を陥れようとしたその行為は、ネットで一夜にして拡散された

 このネット社会。

 逃げ延びることは難しい。


「今いる教室からも退所して欲しいと言われて、もう国内で受け入れる団体はないでしょう。引っ越し先の教室には、こちらから口利きします。大学卒業まではもつでしょうが、続けるだけの心があれば救い上げるそうですよ」

「慰謝料で和解にしてくれたほうが、我々としては楽なんですがね。まったく、ネット関係は難しい。いや、証拠を残してくれるだけ簡単ですか」


 この件に関してはもっと教育が必要だと弁護士たちはため息をついた。

 ルーとアルのデビュー公演はこのようにして幕を閉じた。

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