第206話 閑話・『領都対抗芸能合戦』 もしくはギルマスの災難
お盆休暇を申請いたします。
忙しいのに一人だけ楽するなと怒られました。
ちょっと家事に参戦してまいります。
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本年度の『領都対抗芸能合戦』の概要。
演目・『躍動する沖縄』
メインボーカル・ギルマス
メインダンサー・タタン、エイヴァン、ディードリッヒ
可愛いダンサー・ロウラ、シシィ・リザ・ノラ
楽器担当・ヴィノ、アロイス
音響および映像エフェクト担当・ルー
以上決定事項。
なおエイサー隊は募集中。
◎
ギルマス・なぜ私が出ることになっているんだね ?
ナラ・この時期王都にいる領都出身者の義務ですよ。ギルマス、オーディションしたじゃありませんか。
ギ・出るだけでいいからと聞いていたんだが。
ナ・ですからちゃんとオーディションを勝ち抜いてメインボーカルを勝ち取ったんですよ。素敵でした。声だけ聴いたらまるでEX〇LEです。
ギ・そのEX〇LEが何だかわからないんだが。
ルー・あのお、『領都対抗芸能合戦』ってなんですか ?
シシィ・はじめまして、ルーちゃん。城下町でパン屋さんやってるシシィよ。
ル・はじめまして、シシィさん。
シ・先週冒険者姿でパンを買いに来てくれたわよね。美味しかった ?
ル・あ、もしかしてクマさんの看板のあのお店ですか。はい、とっても美味しかったです。
シ・ありがとう。あのね、芸能合戦って年に一度、各領都出身者がやるかくし芸大会みたいなものなの。優勝すると前年度納税額の一パーセントが免除されるのよ。
ル・そうなんですか。それでギルマスや兄様たちが出演するんですね。
ナ・領主様ご一家は出ちゃいけないことになってるから、ルーちゃんはこっそりお手伝いをお願いね。
ル・はい。任せてください。ギルマスの歌、楽しみですね。
ギ・だから私には無理だよ。年寄りに無理はさせないでおくれ。
ナ・大丈夫ですって。掛け声のところはツインボーカルたてますから。
◎
年に一度の『領都対抗芸能合戦』。
各領ごとに趣向を凝らして舞台を飾る。
ここ数年は北の伯爵家が大人数の楽器演奏で優勝を飾っている。
今年は前奏を小さな子供たちの笛で飾るというあざとさで盛り上がった。
そしてやる気がないのか毎年適当な出し物でごまかしていたダルヴィマール領都ヒルデブランドの番が来た。
突然灯が消え、会場に波の音が響く。
そして全体に海の風景が映し出される中、男性の歌声が響く。
「海よ・・・」
静かにワンフレーズが終わる。
「「「イーヤーサッサッ !」」」
威勢の良い掛け声と共に会場が明るくなる。
勇壮な太鼓の音と共に演技が始まった。
◎
「いやあ、まさかダルヴィマール領に持って行かれるとは思いませんでしたよ」
「素晴らしい舞台でした。歌も良かったが太鼓の音が腹に響いて、こう気持ちを奮い立たせるようでした」
合戦終了後の懇親会。
囲まれているのは領都ヒルデブランドの出演者だ。
それを遠巻きにして、悔しそうに見つめる伯爵領の参加者。
「悔しいなあ」
「悔しいが、完全にこちらの負けだしな。まさか『
「仕事が出来て頭が良くて剣技も凄くて顔もいい上に踊りまで踊れるなんて。反則だよな」
「いや、あれは伝説のヒルデブランド体術だろう ? 外で披露することが少ないから幻って言われている」
「財政省のタタンさんまでだぞ。ヒルデブランド、来年は何をやるのかな」
「こちらも色々考えないと、また優勝を横からかっさらわれていくぞ」
北の想像通り、翌年はヒルデブランドの演技を真似したものがズラリと並ぶ。
だが、当のヒルデブランドは執事服集団による掛け声
その翌年、集団行動
大会のひと月前から御用達の菓子屋でおみくじ入り焼き菓子を売ってアピールし、そのかわいらしさで三度目の優勝。
さらに合唱と言えば女声のみの中、力強い男性合唱で会場中を沸かせて四度目の優勝したところで、さすがにこれ以上はということで
「助かった・・・この年でまた見習メイド服着せられたら、どうしようかと思ったわ」
「仕方がないじゃない。ルーちゃんの次の新人が来ないんだもん。でも私ももう勘弁してほしいわ」
「おい、タタン。お前なんで文官やってんだよ。騎士団に来いよ」
「いやあ、
その後の大会では数年に一度ヒルデブランドの出し物が投影魔法で紹介され、各領都の目標になったのは言うまでもない。
「長年生きててこんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだよ」
「ギルマス、とっても素敵でしたよ」
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お読みいただきありがとうこざいます。
24年度 自衛隊音楽まつり 沖縄
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