第34話 レースと花柄は必要だよね!
偶数日の朝7時前後の更新を目指しています。
よろしくお願いします。
=======================================
子供として生きなおす。
ギルマスはそう言った。
今まで義務だけできた生活ではなく、したいことをしたいといい、したいことをし、いけないことなら大人に怒られる生活。
友達と遊び、たくさんのことを吸収し、なにより自分自身を高める生活。
「冒険者になるのはそれからだ」
「しかしギルマス。チュートリアルを終えたのに冒険者登録をしなかったら、こいつになにか問題があるんじゃないかと疑われますぜ」
「そこなんだなあ」
◎
昨日、延々と泣き続けてしまった。
どうしても涙がとまらなかった。止めようにも自分でも泣いている理由がわからなかったし。
そんな私を泣き止ませようとみんながいろいろ話しかけてくる。
「思う存分泣いていいんだぞ。泣き飽きたら何か食いに行こうな。何が食べたい?」
「ラスさんの棒付きキャンデー」
「なに、お前、食ってないのか」
「全部対価で使っちゃった」
「仕方ねえなあ。ちと頼んでやるよ」
ディードリッヒ兄様が一本くらい自分のために残しておけと言う。
「よし、俺がなんでも買ってやる。財布が許す限りだが。何か欲しいものはあるか」
「可愛い下着」
「・・・俺に買ってこいと。それ、本気か」
「なんでも買ってくれるっていったじゃない。スホーツブラ以外の持ってないし。可愛いの着てみたい」
エイヴァン兄様がうわあっと頭を抱えた。
「言ったさ! 言ったがなあっ! 俺がそれ買いに店に入るのかよ」
「だって、言ったもん! 買ってくれるって言ったもん!」
「なにいきなり幼児化してんだよ! 今までとキャラが違いすぎないか!」
ピョンピョン跳ねて主張する私を、男三人情けない顔で見ている。
いいもん。泣いちゃったから今更恥ずかしくなんてないもん。
「えーと、ルー?」
顔をほんのり赤くしたアロイスが手を挙げた。
「そういうお店には僕たちは出入り出来ないんだよ。叩き出されはしないけど、お帰りくださいって言われちゃう」
「そうなの?」
「そうなの。何か他の物にしない?」
「でも、可愛いの・・・欲しい」
ギルマスは大きなため息をついた。
「ではご老公様のところの侍女頭に頼んでみよう。きっと相談にのってくれる。支払いはエイヴァンにまかせると」
「わーい、やったー」
「俺の名前で買うのかよ・・・」
◎
そんなこんなで、昨日はそのまま泣きつかれて寝られるかもという淡い期待はあっさり裏切られ、今日もみんなで作戦会議をしている最中である。
冒険者としては申し分のない素材である私は、人間としてどうよということでこの先の方向性について話し合われているところだ。
うら若き女子高生に対して人間としてって、かなりひどいと思うんだけど。
「とりあえず一度目のメールは打った。次は明日、一日空いてもう一度。その後で接触でいいね。現世の方はそんな感じで進めて行こう。で、こちらでのことなんだが・・・」
「あの、エイヴァン兄さんが下着を買いに行くという話ですが」
「行かねえって!」
エイヴァン兄様が即答する。
「えー、ご老公様の侍女頭さんにお願いするということですけど、ついでにルーを預けませんか」
「ルーを・・・そういうことか!」
ディードリッヒ兄様がポンと手を叩いて頷いた。
「ギルマス、こいつを女性要人警護にどうかと思うんですよ。お嬢様学校に行ってるならマナーはそれなりにできるはずだし、バレエをやってるならこっちのダンスだってすぐ覚えるはずだ。それなら潜入捜査だってできる。ご老公様のところで淑女教育してもらうのはどうですかね」
「要人警護か、なるほど。そういう手もあるな」
それだと社交性も学ばなければならないし、なにより侍女頭さんを筆頭に女性たちに囲まれていれば、自然に女同士の付き合い方も身につくはず。
さっそくギルマスはご老公様に連絡を入れ、ご老公様からは今すぐこいという返事が迎えの馬車とともに来た。
私たちはその馬車に乗り込んで、ご老公様のお屋敷に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます