第12話  とりあえず目的地

急に涼しくなってきましたね。

暦の上では秋ですが、まだまだ日中は暑いです。

水分と塩分補給、そしてPVとブックマークよろしくお願いいたします。

応援コメントもとっても嬉しいです。



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 怒号に追いかけられながら代官屋敷に飛び込んだ私。

 その後ろで重い金属の門が大きな音を立てて閉められる。

 レンガの石畳に躓いて、豪快につんのめる。

 道と顔が仲良しになる前に、アロイスが抱きとめてくれた。


「お疲れ様! がんばったね。手伝えなくてごめん」

「いいの。私が黙って先に行ったんだもん。急にいなくなってビックリしたでしょ。心配してくれたんだよね。謝るのは私のほうよ」

「怖いおもいもしたんだってね。僕は君の対番なのに、いざというときに助けられなかった。対番失格だよ」

「ねえ、その対番ってなに?」


 ディフネさんも街の人も、何度もその言葉を言っていた。多分アロイスのことを言っているのだとは思ったけれど、正しい意味はわからない。


「対番っていうのは新人冒険者につく専属の教育係っていうかお世話係。元々は海軍兵学校での制度なんだけど、先輩が後輩の面倒をこまかいところまでみるんだ。僕もそうやって教わってきたから。だから、何でも聞いてくれていいし、困ったことは相談してほしいな。冒険者生活になれるまでは徹底的にサポートするからね」


 でも君にはあまり必要ないかなあ。アドバイスしなくてもどんどん先にいっちゃうんだもん、とアロイスは寂しそうに笑った。


「そんなことないよ。知らないことばかりだもん。頼りにしてるって。あ、アルの対番さんってどんな人?」

「・・・屋根の上から落ちた人」

「・・・ごめん」


 なんとも言えない雰囲気の中、私たちは代官屋敷に入った。



 冒険者たちは代官屋敷の門の前に集っていた。


「ずいぶんとしょっぴかれたな。残ったのは三分の二か」

「いろいろと理由をつけては捕まえてますからね、市警の奴ら」

「幼女誘拐未遂とか」

「覗きとか」

「痴漢未遂とか」


 一同フッと軽いため息をもらす。

 気の毒なのは幼女誘拐未遂で捕まった仲間だ。

 裏道をグルグルまわっているうちに自分がどこにいるかわからなくなって、近くにいた少女に聞いたのだ。


「大きい通りに行きたいんだけど、連れて行ってくれるかな」


 その子の手をとって歩き出したところで例の声が道に響いた。


「おまわりさん、コイツです!」


「あいつ、ただの方向音痴なだけだったのに・・・」

「年上の女が趣味なのになあ」


 疑いが晴れるまでヒソヒソされるのはしかたがない。だが、多分、晴れた後でも面白半分でからかわれるのは間違いない。変な二つ名がつかなければいいが。

 自分でなくて良かったと、誰もが心の中でホッとした。

静かに眠れ、同士。君の尊い犠牲は忘れない。


「とにかく、ここに集まっていても仕方が無い。俺たちはここで屋敷から出てくるところを押さえる。他は街にばらけるぞ。帰りも裏道を通るはずだ。見落としがないよう散ってくれ。ギルド前にも何人か配置。決して逃がすな」

「応っ!」



 代官屋敷に入ると、パリっとした初老の男性が迎えてくれた。

 おおっ、セバスチャン! リアル・セバスチャンがいたよ! まさか本物をこの目で見ることが出来る日がくるなんて!


「いかにも私はセバスティアの者でございますが、残念ながら名前はモーリス・セバスティアと申します。セバスチャンは私の長兄でございます」

「え、ホントにセバスチャンさんがいるんですか」

「はい、中央の領主様のところで執事をしております。私は領主館の執事でございます」


 こちらへどうぞと導かれ、私たちは奥の部屋に入った。


「ただいま代官様をお呼びしてまいります。こちらでおくつろぎください」


 私たちが来るのを待ち構えていたのか、テーブルにはお茶の支度が出来ており、かわいいメイドさんがお菓子を勧めてくれる。

 走り回ってメチャクチャ疲れていた私は、美味しくそれらをいただいた。

 そうやってしばらくのんびりしていると、扉がノックされ静かに開いた。

 入ってきたのは、白髪の恰幅の良い老人だった。

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