Episode.3 事情聴取


「お茶です。」


そう言って机に置く。透明のグラスに入った麦茶がカランと音を立てた。


「あぁ。」


青年はそう返事をすると、グラスの上の部分をつかみくるくると回す。氷とガラスがぶつかり合うカランカランという音がまた部屋に響いた。

傍から見ると制服を着た華のJKと和服イケメン、この微妙な沈黙、麦茶を挟んで全くカオスな空間を作り上げていた。

どうしてこんなことになったかと言うと、サカドウ君たちが帰っちゃって呆然としていたらこの人が話があるから安全な場所に移動しようと言われ、どこが安全かなんてよくわからなかったけれど、家には誰もいないから話をするならちょうどよいと思って青年を家に上げてしまったのだ。

あんな死闘を見せつけられた後、その戦っていた当人をやすやす家に上げてしまったのは我ながら防犯がなっていないと後から思った。でも、今更どうこう言える話じゃない。

今はとりあえず、早急に話を済ましてこの人には早くお帰りいただこう。そう思った私は、ただ茫然と麦茶をかき混ぜている彼にさっそく話を切り出してみた。


「先ほどは助けていただきありがとうございました。それで、さっきのは一体…。あの、話って?」


聞きたいことが山ほどありすぎて何から聞いていいのかわからない。でも、確実に私は何かに巻き込まれているから、その何かをしっかり知る権利はあるだろう。

青年は私の質問を受けると、麦茶をかき回すのを止めた。


「そうか、アンタは何も知らないんだな。そうだな…どこから説明すればいいのやら。」


青年は面倒くさそうに頭を掻く。


「いいか、今から俺の言うことは紛れもない事実だ。アンタが信じられなくても受け入れてくれ。」


そう前置きをすると青年は私に説明をしてくれた。


「俺やさっき戦ったピエロみたいな奴は人間じゃない。まぁ、簡単に言うとの住人なんだ。」

彼曰く、この世界(ファイス)には裏側バックが存在していて、裏側バックの人々は私たちが想像するような能力、魔法が使えるらしい。

うん、なんとなく察してはいた。と、言うか、こんなどこからどう見ても常人とは言えない人たちを同じ世界の人間とはあまり見たくない。


「それじゃあ、サカドウ君は?彼もこの世界、表側ファイスの人じゃないの?」


サカドウ君は去年も私と同じクラスだった。だから、サカドウ君も裏側バックの人だとすると彼はそこそこ長くこの表側ファイスにいることになる。なんか、知っている人が実は自分の常識に収まるような人じゃないと思うと少しぞっとする。いや、命狙われて言うことでもないか。


「サカドウ…?あぁ、相方の方か。いや、アイツは表側ファイスの人間だ。」


「でも、サカドウ君手からナイフ出してたよ?」


「それは、契約で得た力だな。これから話すのが、もう一つの話。なぜ、俺たち裏側バックの人間が表側ファイスの世界に来ていて、そしてなぜ、アンタが命を狙われる羽目になったのか、だ。」

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