第三章

 土曜日は、自宅周辺を歩き回って、普段使いのお店を探して過ごした。そして、翌日曜日。僕は、「行ってはならない」と忠告されていた、その場所へ向かうことにしたのだった。


 (・・・・・・さっすがに、怖いなぁ)

 貴重品は置いてきたし、身軽な恰好ではあるものの、やはり、僕の足取りは重かった。ようやく気候には慣れて来たものの、街に親しんだと感じるにはまだまだ時間が足りな過ぎた。言葉は通じない、看板も読めない。スマホはあっても、今の僕を助けにきてくれる通信相手はいない。

 けれど、あの子に会ったことを無かったことにはできなかった。

 だから、僕は覚悟を決めて、その通りに入っていったのだった。


 道は、高級マンション・・・・・・、だっただろう建物に繋がっていた。地価高騰のおり、ローンが払えず手放したり、空き室を作らないために”また貸し”が横行した結果、住人が減り持ち主も分からなくなった建物。つまり、管理費も充分には払われていないから補修も行き届いていない、ボロボロの建物。その建設当時に作られた地下のシェルター、そこへ繋がる非常口の扉が僕の目の前にあった。


 (※次回、ここから)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る