第二章 7 feat.はるさめ
7
開いた扉の方を見ると、そこにはユナさんとボディーガードの姿があった。
初めてあった時のような地味なワンピース姿ではなかった。
黒いスーツにふわふわの分厚いカーデガンのようなものを着ている。
まるで海外のセレブを見ているようだ。
ボディーガードも、the Secret Serviceという感じで、黒いサングラスに片耳だけイヤホンを付けている。また、がっちりとしたガタイに、真っ黒のスーツを着ている。
「あらあら、二人ともごきげんよう。当社のウェルカムサービスはどうだったかしら」
「は?」
僕はユナさんが何言ってるのか一瞬分からなかった。
当社?ウェルカムサービス?何を言っているんだ?それにその服はなんだ?この村の住人じゃないのか?
今、僕の頭には多くのはてなマークが浮かんでいることだろう。
それは、シャルも同じらしい。
「あなた、何を言っているのかしら?この村の住人じゃなかったの?」
僕が聞きたかったことを聞いてくれた。
「はっ。私がこの村の住人?笑わせてくれるわね。どこまで頭がお花畑なのかしら」
ユナさんはシャルをまるで道端の動物の糞を見るかのような目で見下した。
「あぁ?なんだとてめぇ!」
流石にシャルは黙っていられないようで、右手に魔法で細い剣を生成しながらユナさんに飛びかかった。
へぇ。シャルって意外と攻撃に向いているのかもな。
僕が少し感心していると、予想外の事が起きた。
あと数センチで剣先がユナさんに触れる──というところで、シャルの動きが止まった。
…………え?
僕はユナさんを見てみると、そこには左手をシャルに向けて立っている彼女がいた。
手のひらと剣の間には、半透明のシールドが展開されており、シャルの剣はそのシールドに阻まれていた。
「クソっ……!」
シャルは悪態をついた。
ユナさんはそれを冷笑った。
「ほんっとに野蛮ねぇ。服に皺でも付いたらどうするつもりなのよ」
ユナさんがシールドを展開している左手を振る仕草をすると、シャルは軽々と飛ばされた。
「シャルっ!?」
思わず声が出た。
「わたしなら……大丈夫よ……」
シャルはゆらゆらしながら起き上がった。
「あなた達ってすごく面白いわね。あの巨人を、ゴーレムを易々と倒すのだから……」
「あのさぁ!」
まだユナさんは喋りたがっていたが、これ以上は耳障りと思った僕は話を遮った。
「ユナさんの正体はなんなんだ?夜の事件も嘘なのか?」
僕は立て続けに質問をする。
ユナさんはそれをなんとも思っていないようで、平然とした顔で答える。
「初めに、私の正体だけど、それは秘密よ。あなたが思っているほど口は軽くないわ。次に、夜の事件についてだけれど、それは本当よ」
正体は秘密だけど夜の件は本当。
果たしてそうだろうか。
この女――ユナさん――はどこか怪しい。
「私は毎晩頭を抱えているの。ここの従業員がどんどん消えて、このままじゃ人手不足になってしまうわ」
毎回狙われるカジノの従業員。
この事件はなんだか変だ。
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