第二章 2 feat.レトリック
2
「凄いな…まるで本当のニューヨークの街並みそっくりだ…」
「にゅ、にゅーよ?なにその変な名前の街」
この女知らないのか!?子供たちはこれを聞いて育つって言われるほどの長編小説をか?
「え?知らないのか?かなり有名な小説なんだが…ほら、主人公が色んな街を旅していくってやつ。その時に出てくる架空の街がニューヨークって言うんだ。僕はラスベガス編とか結構好きなんだけど」
軽く説明してやっても、女はどうも心当たりが無さそうな顔をして首を傾げている。
すると、先程まで僕達にどのようなカジノを楽しんでもらおうか等を悩んでいたユナが、
「あ!ラスベガス編いいですよね!私なんてもう何十回も読み返しちゃって今ではすっかり愛読本なんです!それでラスベガス編で1番気に入ってるシーンは主人公がラスベガス一のカジノプレイヤーに勝っちゃう場面でして、もうあの時の爽快感と言ったらたまりませんよね!それに…」
…物凄い剣幕で話に乗ってきた。恐らく本当にあの小説が好きな人なんだろう。街にいた時とは別人に見えるほど、生気に満ち溢れている。
ラスベガス編が好きって言ってたし、カジノもきっと好きなのだろうと推測する。だからカジノを真っ先に勧めてきたのだろう。
「で、ですよね。あのシーンはとても印象的でした。」
「わかりますか!?わかってくれちゃいますか!?」
「う、うん、わかるわかる…」
そうしてユナの話に僕が相槌を打っていると…
「あーもう!知りません知りません知・り・ま・せ・ん!悪かったわね!世間知らずで!」
急にこの女が大声をあげてきた。遂に耐え切れなくなったみたいな顔で。本当にあの小説を知らないんだな…
「わかった、知らないのはわかったから大声を出すな女」
「わかったんなら私の知らない話で盛り上がらないで!居心地が悪いったら…って、あんた今私のことなんて呼んだ?」
なんだこの女?実は結構寂しがり屋だったりするのか?いつもはこんな強気なのに…
そんな意外な一面を覗いたと思いながら、女の質問に答える。
「は?あー…まぁ女っていうのは訂正する。…お嬢さん?」
「なに?からかってんの?それとも名前教えたのに忘れちゃった?あんたの頭は鳥さんの頭なのかしら?」
「いや…忘れるもなにも、教えてもらってないだろ…さっき見たけど。」
何言ってんだこの女。いつ教えてもらったんだよ。
「本当にどうしたの?教えたじゃない。ほら、あんたがパンの…」
「あ!ニグルムさん、シャルさん!あれやりましょう!あ・れ!」
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