厩戸王子
王子たちが戦況を見守る後方の陣営に、馬子は逐一戦況の報告にやってくる。
厩戸王子はそこへ口を挟んだ。
「このままでは敗けてしまうのではありませぬか。仏さまにお願いをしなくてはなりますまい」
と言って、
馬子は攻め急がず、物部勢の守り疲れる時を待って、最も少ない労力で勝つ計算をしている。敵に食糧の蓄えがどれだけあるかも探り、陣容に乱れがないかなども刻々と窺い、もう何日という見通しも立てている。そこで馬子は多須奈に、いついつまでは持ってくるなという条件付きで、厩戸王子の発願による四天王像の制作を課した。
それから三日、六日、九日と経つうちに、馬子の読みの通りに、
馬子は、前線の陣営に部将や兵士を整列させて、後方から王子たちを迎えた。厩戸王子は壇に上って、四天王像を順にうやうやしく押し戴き、
「今もしわたしをして
と誓いを立てると、
「
何を言っているのか誰にも分からない。
「……
物知り顔をつくろうのが得意な貴族たちも、唖然とした感情を眉に浮かべている。
「
君主がこの経を捧持し、
厩戸王子が経を詠み終えると、馬子も壇に登って四天王像に跪拝し、
「およそ諸天王、大神王たち、我を助け衛りて、
と誓った。そして、
「かたじけなくも厩戸王子のお祈りを賜わり、わが
と全軍進撃を命じた。守屋の兵士たちは、もう戦意を阻喪しつつある時だから、寄せ手が意気盛んに迫るのを見て、矢をつがえるより逃げる算段をする。守屋はまた榎に登り、弓を鳴らして陣を励ます。
ここに、
別に守屋の難波の別荘を守っていた
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