疫病と政治
「
という結果を得たとして、馬子は使者を立てて王に申し伝えた。仏を海に流したのが良くなかったというのである。そこで王は、大臣がもう死にそうなのだと考えて、最期の願いは叶えてやろうと、
「卜部の
と命じようとした。こんなことを快く思わないのは、やはり
「なにゆえにかわが父の
馬子の建てた仏殿や塔を燃やし、仏像を捨てるべしと訴えた。物部はただの貴族ではない、王室より古い氏柄、由緒正しい血筋を誇る守屋にこう凄まれては、馬子への同情に傾いていた朝議の雰囲気も変わる。先代からの政策の維持を原則としてきた王としても、
「
と
他田王と、物部守屋大連、蘇我馬子大臣、政治を司る三人が三人とも病気になったので、朝臣たちは王妃
「
と悲愴な申し出をした。王はついに馬子の請いを聴して、
「蘇我の
と詔した。それは病の床で、王が口ずから発したのだと伝えられた。それが、他田王の最後の命令になった。四月六日、王は容態が変わって、息をひきとった。炊屋姫は、
寒い風が吹き始める季節に、人々の関心は空いた王座にあった。
当の穴穂部王子は、倭王になるのは自分に違いないと思っていた。穴穂部は
ところが穴穂部の期待は、思いがけず早くに裏切られた。九月、炊屋姫は独断で、倭王の印綬を橘王子に与えてしまった(用明天皇)。もっとも流行り病のために、朝臣が集まることもまれになっていたから、異議が申し出されることもなかった。守屋もまだ、病後の療養として、家にこもっているし、卿士大夫はみな感染を恐れて互いの屋敷を訪れることもしない。まあ歳の順だから悪いことはないではないか、と人々がささやくなかで、穴穂部にはどうするという手もない。橘王は
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