第633話
「う〜ん・・・」
此処はジェールトヴァ大陸上空。
俺はチマーの侵入者捜索に協力する為、空からの地上を監視していた。
「チマーが発見出来ない者を、俺が発見出来るとは思わないが・・・?」
それでも監視をしている理由は、チマー曰く、自身は害意のある者から搦手に対しては、闇の因子により身を守れる為、其処迄注意深い性格ではないと胸を張って言われたからだった。
「まぁ、発見さえすれば、チマーが倒してくれるだろうしな」
現在、この世界で最強と呼べる者がバックにいる為、俺は軽い気持ちで不幸な侵入者を探していたのだった。
「ここどこ?」
「お兄ちゃんは?」
「ママ?ママーーー‼︎」
そんな日々を過ごす中、チマーが定期の巡回から連れて戻って来た三人の子供達。
「何処で?」
「海岸沿いだよ。いつもそこら辺さ」
「そうかぁ・・・」
子供達も内陸の方には家族は居ないと知っているのか、捨てられた子達はそこら辺を通常彷徨っているらしい。
「でも、こんな歳頃の子も?」
「珍しいケースだけどゼロでは無いね。攫って売り手がつかない場合に捨てに来るらしいね」
「・・・」
チマーは悲しみも怒りも感じない、淡々とした口調で告げて来たのだった。
(慣れ過ぎてなんだろうけど、逆に怖いな・・・)
「こほん、こほん」
「ぅぅぅ」
「背中痛いよぉ」
「っ⁈チマー⁈」
「・・・」
子供達の反応に俺が声を上げると、チマーは其れには応えずに子供達の背を押し住処の中へと入って行ったのだった。
「司ーーー‼︎」
「モナカ。どうかしたのか?」
「帰る頃だと思ったから、出迎えに来てあげたのよ」
「あぁ、そうか・・・。ありがとう」
「どう致しまして」
チマーが新たな子供達を連れ帰って一週間が経とうとしたある日。
俺はここ一週間、子供達に付きっ切りのチマーに代わり此の大陸の巡回を行っていた。
「何か変わりはあった?」
「いや、何にも無いな・・・。多分」
「ま、当然よね」
申し訳ないとは思ったが、自身の鈍さも理解している為、自信を持って大丈夫とは応えられない俺。
然し、モナカは此処に変わりなど無く、其れが普通だと考えているのだろう。
俺の答えにツッコミを入れる様な事はしなかった。
「ママは凄い強いんだから」
「モナカはチマーの強さを知ってるのか?」
「司もなんだ?」
「あぁ、まぁな」
「じゃあ、私と司だけだね?」
「え?」
「私以外は、もう皆んな・・・」
「・・・」
「それ位、昔の話だから」
淡々とした口調で、ショッキングな内容を告げて来たモナカ。
正直、あまり発育が良いとはいえないモナカは、此処で最年長という風には見えないし、モナカの歳で長く生きれているとは・・・。
「どんな馬鹿が、チマーに手出しをしたんだ?」
「ママにじゃないよ。子供を捨てに来た大人に、当時此処で暮らしてた男の子達がかかって行ったの」
「無茶をするな・・・」
「許せなかったんだよ。そんな事する大人達が・・・。それに、どうせ時間は限られているから・・・」
「・・・」
一瞬の間に、其れを埋める答えを今出す訳にはいかない俺は、別の内容に話を逸らした。
「そういえば、新入り達の調子はどうだ?」
「うん。もう、慣れたみたいよ。体調も落ち着いて来たし」
「そうか・・・」
俺がチマーに代わり巡回をする理由となった新入りの子達。
幸いというか、取り敢えずのところで体調は落ち着いたらしかった。
「でも、体調は大丈夫でも、精神状態は良くないみたい」
「まぁ、いきなり此処に連れて来られたんだからなぁ」
「うん。だから、ママが一度皆んなの息抜きも兼ねて遠足に連れて行って、新しく来た子達に此処は家から遠いって事を納得させるみたい」
親を見つけ様にも、犯人も分からないし、何より犯人を捕まえられたとしても、其奴等が直接攫ったかは分からないのだ。
(捨てる事だけの依頼を受けた可能性も高いしなぁ)
そうなって来ると、チマーの判断に従うのが現状一番といえるのだった。
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