第407話


「闘いの為の準備って?」

「ん?」

「其の女は、今、何をしているんだ?」

「くくく、ヒトを創り出しているのであろう」

「其れはもう、確定なのか?」

「さてな」

「・・・」

「くくく」


 人を食った様な応え方をして来るラプラス。


「ただ、ヒトを創り出せるのが追放者側で、魂を操れるのが守人側なら、何と闘うんだ?」

「無論、追放者と守人の闘いだ」

「じゃあ・・・?」

「ヒトを創り出すと言っても、人形を創る訳では無い」

「それじゃあ・・・」

「男と女の営みに紛れさせ、特殊な種を女の中に植え付けるのだ」

「それは誰が?」

「勿論、其の女と神の手の者だ」


 どうやら、俺が想像していた様な人形的なヒトでは無く、ちゃんとした人間というものなんだな・・・。


「じゃあ、ルグーンは?」

「其の種に、魂を移動させていると想定出来る」

「・・・っ」

「無論、根付く筈だった魂を滅しだ」

「・・・」


 俺に続けさせず、結論を口にしたラプラス。


(まぁ、そうなるか・・・)


 ラプラスが神は守人側では無いという発言も、其の想定から来ているのか・・・。


「あれ?でも・・・?」

「くくく、何だ?」

「魂を移動って、ルグーンは自分のもの以外も操れるのか?」

「無論だ。寧ろ其れこそが、守人側の戦力が減らん最大の理由だ」

「其の魂は何処から?」

「創造種の楽園からだ」

「境界線は?」

「魂だけなら越えて来れる」

「・・・」


 まぁ、守人側は追撃者なのだから、楽園も協力的なのか・・・。


「じゃあ、ヒトを創り続ける限り、相手側の援軍が続くのかぁ・・・」

「そんな事は有るまい」

「え?」

「楽園の者達全てが、守人側では無いからな」

「じゃあ、追放者側も?」

「其れは居らんだろうが、近しい考えの者は居るかもな」

「・・・」


 ラプラスの答えははっきりしないものだったが、其処のところは、禁忌とやらが何か分からないから、どうにも判断出来ないな・・・。


「でも、それならヒトなんて、創らない方が良いんじゃないのか?」

「くくく、かもな」

「かもなって、誰も止めないのか?」

「当然であろう。神ごときならまだしも、其の女に敵う者など限られているからな」

「なるほど・・・」


 此奴が其所迄、言うって事は、相当な実力者なのは確かだろうけど・・・。


「相当、迷惑な女だな」

「くくく、まあな」


 俺の率直な感想に、ニヤけつつ応えるラプラス。

 ただ、俺の感想を肯定しつつも、其の女への不快感の様なものは感じられなかった。


「ただ、奴には奴で、何かしらの狙いが有るのだろう」

「狙い?」

「ああ。最近になってだが、ヒトを新たに創り出す事を止めた様だしな」

「じゃあ、もうルグーンは・・・」

「うむ。此れ以上の魂移動は不可能だろう」


 其の女が何故、今更になってヒトを創る事を止めたか分からないが、奴等の勢力が増えないのは良い事だ。


(ただ、ラプラス自体の発言に二転三転有るところをみると、確信が有るのかは怪しいな)


「だから、魔法で精神支配をして操ったり、九尾を生み出したりしてるのかぁ」

「何だ、其れは?」

「え?」

「魔法の方は何となく想像が付いていたが、九尾とやらは全く聞いて無いぞ」

「あ、あぁ、そうだな」

「くくく、貴様は我にだけ情報を提供させ、自身の得た情報は伝えぬ訳か?」

「い、いや、実は・・・」


 レイノでの幼い九尾達の話をラプラスへと伝えると・・・。


「・・・」

「ラプラス?」

「ふんっ、下衆めが・・・‼︎」

「・・・っ⁈」


 意外過ぎるラプラスの反応。

 ただ、俺の言葉を詰まらせたのは、其の反応では無く、其の形相の恐ろしさだった。


(初めて此奴に会った時・・・、前回の転生の時の話を振った時、こんな表情をしてたな・・・)


「そういえば・・・」

「・・・何だ?」


 不機嫌そうにするラプラスだが、聞いておかなければいけない事の為、俺は圧の中何とか続ける。


「ルグーンは薬で九尾を成長させたと言っていたが、闇のルートを持つ者に聞いても、そんな薬は無いと言われたんだ」

「ほお?貴様も珍妙な知り合いが居るらしいな」

「まぁな・・・。そんな薬が楽園に有ったりするのか?」

「さてな、聞いた事は無い」

「そうかぁ・・・」

「ただ、其の手の下品な物を創り出すのを得意としていた者は居たな」

「其奴は?」

「ふんっ、まあ気色の悪い奴だったがな」


 吐き捨てる様に発したラプラス。

 その表情は、本当に嫌そうにしていたのだった。

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