第387話


「ポーさんはいつから此処に?」

「いつじゃったかの・・・、う〜ん・・・」

「・・・」

「う〜ん・・・」

「・・・」

「・・・忘れたっ」

「・・・そうですか」


 たっぷりと溜めてから応えたポーさん。

 少なくとも軍人達より前に此の島に上陸していた訳だし、その上陸方法も気になった。


(魔法が下級迄というのが嘘の可能性もあるが・・・)


 双眸に魔力を注ぎながらポーさんを観察してみたが、確かに其処迄の魔力量は無い様だった。


「じゃが、お主達も不思議なパーティじゃの?」

「不思議、ですか?」

「うむ。人族にダークエルフ。それに姿こそ人族じゃが、明らかに異なる存在」

「・・・っ⁈ポーさん、貴方は・・・?」

「ふむ・・・。まあ、年の功というやつじゃの」

「・・・」


 俺の背後に隠れるルーナが人族でない事に、気付いているらしいポーさん。

 その双眸は此方を捉えて、観察を続けていた。


「う〜ん・・・」

「・・・」

「分からんっ」

「え?」

「降参じゃ。正体が見破れん」

「・・・」

「まあ、ええの〜、べっぴんさんじゃし」


 1人納得した様に、再び鼻毛で遊び始めたポーさん。


「ポーさん」

「ん?何じゃ?」

「ポーさん達の纏っているマントですけど・・・」

「魔物や魔獣の素材で作っておる」

「やはりこの島は、魔物や魔獣が闊歩しているんですか?」

「そうじゃの〜、大体外が暖かくなるとダンジョンから出て来るからの」

「暖かくなるんですか?」


 俺はポーさんから告げられた意外な内容に、若干前のめりになりながら聞き返していた。


「まあ、現状よりはの。氷が溶け始める位で、直ぐに再び寒くなるがの」

「そうですか」

「ただ、稀にその期間が長くなり、外の寒さに魔物が適応すると、そのままダンジョン外で生活しだすのじゃ」

「法則はあるんですか?」

「ふむ・・・、どうじゃろうの」

「・・・」


 ポーさんの様子は何か知っている様でもあり、然しだからといって、其れを答える気は無い様に見えた。


「然し、リアタフテ殿は何の為に此処に来たのだ?」

「あぁ、そうでした。リョートとアゴーニを知っていますか?」

「リョート?アゴーニ?」


 俺からの問い掛けに、セリューは表情に疑問符を浮かべていた。


(この規模の異常気象の中で、3年間疑問を持たなかったのか?)


 俺がそんな風に考えていると、別のところから意外な反応があった。


「ほお、神龍を探しておるのか?」

「ご存知ですか、ポーさん」

「まあの」

「この島に2匹は・・・?」

「居るよ〜」

「「「ええーーー⁈」」」


 俺からの質問に軽い口調で答えたポーさん。

 あまりにもさらっと答えられた内容に、軍人達は驚きの声を上げていた。


「ポ、ポーさん、どういう事ですか?」

「どういうって、居るもん」

「何故、そんな重要な事を今迄、黙って・・・」

「ん?其れを伝えたら、お主達が落ち着いて居れんじゃろ?」

「当然です。通常の飛龍や海龍だって狩る為にかなりの被害が想定されているのに、神龍などという伝説上の存在に冷静では居れないですよ」

「じゃからじゃよ?お主達が諦めて暴走すれば、ろくな事にならんからの〜」

「・・・うっ」

「じゃから、遠ざけておった」

「・・・っ⁈そういえば立ち入り区域の指定を・・・」

「うむ。其処に居るからの〜」


 どうやら2匹の居所迄、知っているらしいポーさん。

 知らされてなかったらしいセリューが、食ってかかり、必死に食らいついていたが、ポーさんは軽く受け流していた。


「それは何処ですか?」

「ん?島の中央の盆地の底じゃ」

「あぁ、彼処かぁ・・・」


 俺は船から島に渡る途中、上空から眺めた時に盆地は確認していた。


「周囲の山がリョートの力によって凍っておるから、底が深く確認が出来んがの」

「確かに底は見えなかったですね」

「然も、アゴーニに関しては、常時活動しておる訳では無いしの」

「そうなのですか?」

「うむ。アゴーニが力を使用すると、強固なリョートすら傷つけるからの」

「へぇ〜・・・」

「日頃は力を貯め込んで、一気に発散するのじゃ。炎の雨は其の二次災害みたいなものじゃ」

「・・・っ」


 ポーさんの言葉に眉をひそめる俺。


「じゃあ、今は・・・」

「ふむ。丁度力を貯め込んでおる時期じゃの」

「・・・」


 ポーさんは何でも無い風に告げて来たのだった。

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