第309話
「あんらあ、久し振りだねえ」
「あぁ、ジェアン」
「おお、司よ」
「久し振りだな、梵天丸」
俺が終末の大峡谷へと降り立つと、出迎える様に長のジェアンとリアタフテ領出身のワーウルフ梵天丸がやって来た。
(まぁ、実際は俺を警戒して来たんだろうが・・・)
流石に侵入者が俺なのを確認すると、2人?は警戒を解いた様だった。
(でも・・・)
俺は前回は察知出来なかった、周囲から此方に向けて、明確な敵意を発する存在を感じる事が出来た。
「どうしたね?」
「あぁ、実は相談が有ってさ」
「そうかい?この間みたいに挨拶無しで帰るかと思ったよ」
「悪かったな」
「良いさね」
ジェアンはゼムリャーの魔石を置きに来た時の事を言ってるのだろう。
確かに前回は手早く作業を済ませ、そのまま転移の護符で帰ったからなぁ・・・。
「それで、あたしに何の様だい?」
「あぁ、実は・・・」
俺はジェアンへと魔石の件を相談したのだった。
「・・・」
「どうかな?」
「そうさねえ・・・。難しいねえ」
「そうか・・・」
答えは何となく想像していたが、了承を得られ無かったかぁ・・・。
「此処に還って来た子達が皆んな転生する訳では無いけれどねえ」
「そうなのか?」
「少なくとも、あたしは魔人位しか会った事は無いさね」
「・・・」
「後は、最近スヴュートさね」
「なるほど・・・」
「ただ・・・」
「・・・」
「だからといって、それなら何故皆んなが此処を目指すのか?其の疑問が残るさね?」
「そうだな・・・」
ジェアンの言う事は最もで、理解も出来たが・・・。
(ただ、ラプラス曰く魔物達は、あくまで魔人復活の副産物に過ぎないらしいからなぁ・・・)
そう考えると此処に有る魔石の大半は、次回の転生は望めないと思うのだが・・・。
(でも、明らかに・・・)
「分かったよ。悪かったな」
「良いさね。気にする事無いさね」
「・・・あぁ」
気にする事無い。
ジェアンがそう言ったのは、俺が魔石の話を始めた時に向けられて来た、殺意に対するものだろう。
(梵天丸は特殊な例で、他は人族に対して余程恨みが有るんだろうな)
まぁ、連中にしてみれば勝手にダンジョン精製魔法で魔人を復活させ、自身の生まれる状況を作り、其れ等を攻略する為魔法を使用し、魔空間を生み出し魔石を成長させ、やがて来る終わりを待つ日々を過ごさせているのだから、其の恨みは単純に筋違いとは言えないだろう。
(ただ、其れを梵天丸以外が俺に向けるのは流石に遠慮して欲しいがなぁ・・・)
「ん?どうしたのだ、司」
「・・・いや、何でも無いよ」
「そうかそうか」
「・・・」
当の梵天丸は俺に対して恨みを示さないのだが・・・。
「けど、2匹目の神龍狩りに成功するなんてねえ」
「まぁ、まだ2匹だけどな」
「まだ?もしかして、8匹全部狩るつもりかい?」
「あぁ、そのつもりだ」
「あんらぁ〜」
「おっ・・・」
心底驚いた様子で自身の膝を叩いたジェアン。
(自分のデカさに気を使って欲しいなぁ)
俺はジェアンの反応に驚き、若干引いてしまった。
「ジェアンは他の神龍が何処に居るか知らないか?」
「そうさねえ〜・・・」
「・・・」
両腕を組み、視線だけを空に向け唸り出したジェアン。
「うう〜ん・・・」
「・・・」
(若干コミカルな動きなんだよなぁ・・・)
その動きが良く似合うジェアン。
(巨体はともかく、その容姿は完全にコメディエンヌの演じる肝っ玉母ちゃんの其れだからなぁ)
「う〜ん、里に行けば何か分かるかもしれないけどねえ」
「里って、巨人の国か?」
「そうさね。ただ、あたしは追放されてるからねえ」
「そうかぁ」
「悪かったねえ」
「いや」
ジェアンがこう言うという事は、やはり巨人族には人族に伝承して無い歴史も有るんだろう。
そんな風に考えていると・・・。
「ふふ、神龍なら知っているよ?」
「え・・・?っ⁈お前は‼︎」
俺達の後ろから掛かった声に振り返ると、其処には以前ディシプルで取り逃がしてしまった、違法露店の男が立っていた。
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