第168話
「それじゃあ戻るか」
「良いのですか、司様?」
「あぁ、此奴を倒せば大爆発で俺達も全滅だし、とりあえず策を練ろう」
「・・・分かりました」
「くく、我の前で語る内容では無いだろう」
「いや、お前に言われても説得力が無いよ」
「くくく、そう褒めてくれるな」
「・・・」
(いや、欠片程も褒めてない)
とりあえずラプラスから聞き出したい事を聞き出し、俺は今日の探索を終える事にした。
「さて、行こう皆んな」
「くく、待て」
「ん?何だ?」
呼び止めるラプラスを振り返る俺。
先程迄、自分が話を打ち切ろうとしていたのに、どういう心境の変化かと思ったが、用件は別の事だった様だ。
「帰る前に、通路の掃除をして行け」
「・・・」
「流石に我もあの状況では、精神的な苦痛を感じるからな」
「???」
「くく、間の抜けた表情で切り抜け様とは良い度胸だ。再戦と行くか?」
「・・・ちっ」
「くくく」
ラプラスからの指摘に自身の魔法による惨状を思い出し、俺はどうにかやり過ごそうと、何も知らないという表情を浮かべたが、どうやら此奴は見逃してくれない様で、せめてもの抵抗に舌打ちをしたのだった。
仕方無く通路のアークデーモンの死体から魔石を取り、ディアの魔法で燃やしていく俺達。
「血はどうするかなぁ・・・」
「あれ?司って水系の魔法使えないの?」
「あぁ・・・」
「そうか、参ったね〜」
「でしたら私が」
「えっ、フレーシュ使えるのか?」
「ええ、下級の物ですが」
「そうか、助かるよ」
そうして死体の処理を終わらせ、フレーシュが魔法で血を流していった。
「ふぅ〜・・・」
「くく、大儀であった」
「・・・」
「何だ?」
「いや、何でもないよ」
「くくく、そうか」
水魔法はフレーシュしか使えず、まだしばらく血の処理に時間が掛かりそうな為、俺はラプラスへと質問してみる事にした。
「なぁ、終末の大峡谷に行くのは、魔人だけなのか?」
「そんな事は無い」
「じゃあ・・・?」
「魔石の成長が顕著な魔物が向かう場合もあるな」
「・・・そうか」
「何だ、何か覚えがあるのか?」
「あぁ、まあな」
「くく、まあ良かろう」
(梵天丸の場合は魔石の成長と考えた方が良いのだろうな)
「なぁ、お前って輪廻転生してるって事は、以前にも復活した事あるんだよな?」
「当然だ」
「なら、今回は何年振り位なんだ?」
「十数年だな」
「えっ⁈そんなに早く転生するのか⁈」
「今回はその様だな」
「今回はって事は、前回は?」
「数十だったかな?その前だと数年という事も有る。其れに場所も決まっている訳では無い」
「そうなのか・・・」
ラプラスから聞いた転生の新事実。
俺は輪廻転生という言葉の字面から勝手に数百、数千年単位の期間を想像していたのでかなり驚いた。
場所については、魔床の発生する場所は固定ではないのだし当然だろう。
「じゃあ、前回も終末の大峡谷に旅したんだな。どういう場所なんだ?」
「・・・」
「・・・っ、お、おいっ」
「・・・何だ?」
「いや、何だ・・・、って」
(今、一瞬、戦闘中も見せなかった様な恐ろしい表情をしてただろう・・・)
何が此奴の怒りに触れたかは分からなかったが、既に表情は戻ったが、纏う空気には若干の緊張感を感じた。
その後、流石にこれ以上雰囲気を悪くするのは得策では無いと思い、それ以上の質問は控え、フレーシュによる掃除が終わると同時に、ダンジョンから出るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます