第169話
ダンジョンでラプラスと出会って1週間。
あれ以降、1度ダンジョンに向かったが、ラプラスの居た地点より奥は無く、数匹のアークデーモン以外に収穫は無かった。
(まぁ、アークデーモンを狩っても、ラプラスは怒りを示す事が無いのは助かったが・・・)
ラプラス曰く、魔物はあくまで自身の復活の副産物に過ぎず、其処に特別な感情を抱く事は無いとの事だった。
ただ、収穫も減った為、とりあえずパーティは1度解散となった。
そして、ダンジョン探索を行わなくなった事から、俺は放課後は真っ直ぐ屋敷に戻り、ローズの部屋で暮らす日々が続いていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ねえ、司」
「ん、どうした?」
「子供の名前の事なんだけど・・・」
「・・・あ、あぁ」
「・・・」
「いや、考えてはいるんだよ?」
「・・・」
「ただ、まだ男の子か女の子かも分からないし・・・」
「・・・」
「ローズ?・・・ローズさんや?」
「はぁ〜・・・」
「すいません」
俺はローズから最初に妊娠が発覚した時に、子供の名前に日本人名(男の子)を依頼されていたのだが、其のままになっていた。
(然も、フォールに言われた剣の名も付けてないんだよなぁ・・・)
ただ、子供はもう待ってはくれない為、俺は日本名で男の子と女の子の名前を考える事にした。
「何か、リクエスト的なものはないかなぁ?」
「リクエスト?」
「あぁ、日本名だけだと流石に範囲が広すぎて」
「そうねぇ・・・、リアタフテ家は代々風系の魔法の使い手が多いから、風に関係ある名前が良いかしら」
「風かぁ・・・」
ローズから示されたリアタフテ家の家系の特徴。
俺は其処から連想される言葉で、幾つかの候補を挙げてローズと話し合うのだった。
ローズと子供の名前を相談した翌日。
俺は1人で街へと来ていた。
用件はギルドへ魔石の報酬の受け取りの為だった。
あの日ダンジョンから出てギルドへ魔石を納めに行くと、アームから報酬の払いを待ってくれと頼まれた。
(アークデーモンが全部で173匹だったからなぁ・・・)
流石に3000万オール以上は地方のギルドが一括で払うと、他の冒険者達への報酬が支払えなくなる為、王都のギルドから送金して貰うとの事で、今日はアームから報酬の準備が出来たとの連絡を受け、其れを受け取りに来たのだった。
「これは真田様ではありませんか?」
「え?あぁ、ルグーン殿」
「買い出しですかな?」
「いえ、今日は別件でして」
「そうですか」
出会したのはルグーン。
彼は俺とローズの式の段取りがついた後も、リエース大森林の捜査の為、リアタフテ領に滞在していたのだった。
「そういえば、最近ダンジョン探索を行っていないらしいですが、何かありましたか?」
「え、えぇ・・・。ローズの出産も近いので控えてます」
「おお、そうでしたね。もう今月には?」
「はい、予定通りなら」
「そうですか。いよいよですね」
ルグーンから振られたダンジョンの話題。
俺達はまだラプラスの事を誰にも報告しておらず、話を逸らす為ローズの出産を理由にするのだった。
「ボスは・・・」
「え?」
「ダンジョンのボスには出会えましたか?」
「・・・いえ、まだですね」
「・・・そうですか」
「ルグーン殿、ダンジョンに興味が?」
「ええ、そうですね。私の様な戦いの才を持たない者は、ダンジョンで活躍する冒険者の方々の冒険譚に憧れを持ちますので」
「そうですか・・・」
分からなくも無いなぁ・・・、俺はそんな風に思った。
(ローズの婚約者として、此方の世界に召喚される迄の俺ならルグーンの言う事が理解出来ただろうしな)
「ダンジョンに出現する魔物がアークデーモンという事は、かなり強力なボスが待ち受けているのでしょうね」
「そうなると思います」
「是非とも達成の際は武勇伝を聞かせて頂きたいです」
「えぇ、その時は・・・」
「では、失礼します」
「はい、また・・・」
ルグーンと別れた後ギルドで報酬を受け取り、学院へとルチル、ミニョン、フレーシュに報酬を渡しに行くのだった。
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