第149話
「行くぞっ、暗闇を駆る狩人‼︎」
「ふふふ、どうした?まだ先日の疲れがとれぬか?」
俺へと挑発をしながらも、無詠唱と短縮詠唱を始めたディア。
「スピードエフェクト‼︎」
「ふふふ、非道い事をするな?おねえちゃん?」
「・・・ディア」
「良いのか、余所見をしてて?」
「ふふふ、どうか・・・、のっ‼︎」
「はあっ‼︎」
血縫いの槍を手にし突きを放つディアに、俺は剣を手にし刺突を払い闇の狼をディアに放った。
「喰うかっ」
「ちっ‼︎」
「どうした、終わりかの?」
「まだだ‼︎」
バックステップで距離を取りながら、再び無詠唱を行う俺。
追撃しようと槍を構えたディアの頭部にフレーシュの放った矢と、足下にはブラートの放った雷が襲いかかった。
「ちっ、小癪な‼︎」
其々を槍と炎を纏った尾で払ったディアへ、俺の生み出した闇の狼が今度は3匹襲いかかった。
ディアは其れを体勢を崩しながらも躱しながら、自身の周囲に展開していた火の玉を俺とフレーシュに放ってきた。
「ちっ」
「焼き尽くされるのじゃっ」
「させん‼︎」
フレーシュは其れを横に躱したが、俺は魔法を放った影響で隙を突かれてしまった。
眼前に迫る火の玉に、自身の急所だけでも守ろうとしたが、火の玉は俺に着弾する前にフォールによって掻き消された。
「フォール将軍」
「さあ、行くぞ」
「ええっ」
「ちっ」
フォールの言葉に再び無詠唱を行う俺。
「ふんっ、馬鹿の一つ覚えを‼︎」
「ああ、あまり賢くは無いがなっ」
「喰らう訳がなかろうっ」
再び躱され森林を駆けて行く狼。
(どうかな?そろそろ種蒔きは終えても良いか?)
そんな思考を行なっていると、ディアは初めて描く魔法陣を無詠唱で形成した。
「むっ‼︎」
「はぁ‼︎」
短縮詠唱の其れとは比べ物にならない速度で俺に襲いかかる火の玉。
ブラートより情報を得ていた俺は、其れを横っ跳びで躱した。
「ふんっ、気に喰わんのじゃっ」
「そう言うな、喰らう訳にはいかないだろう?」
「遠慮をするなっ・・・、はあ‼︎」
視線は俺に向けながらも意識は他のメンツにも向けているらしい。
ディアは背後から放たれたブラートの雷を、炎を纏った尾で叩き掻き消した。
「行くぞ‼︎暗闇を駆る狩人‼︎」
「無駄じゃっ、読み切っておるのじゃ‼︎」
「そう・・・、かい‼︎」
「な⁈」
構え闇の狼を迎え撃とうとしたディア。
然し、狼は彼女に向かう事は無く俺の背後へ駆けて行った。
「はあああ‼︎」
「アタックエフェクト‼︎」
「ちっ、何を・・・⁈」
狼が駆けるのを合図にディアへと地を蹴る俺へと、フレーシュから支援魔法が飛んで来た。
狼が神木へと辿り着き、其の牙を立てたのを確認し俺は放ち続けた狼達へ指示の咆哮を飛ばした。
「噛み斬れーーー‼︎」
「・・・っ⁈」
俺の指示に全ての狼達が応え、神木の幹を裂きディアと其処に向かい駆ける俺へと倒れて来る神木が6本。
「自滅する気か⁈」
「安心しろ、俺もディアも死にはしないよ‼︎」
「ちっ‼︎」
俺へと槍を構え無詠唱を行うディア。
「はあぁぁぁ‼︎」
「くっ‼︎」
ディアの構えた槍を全力の斬撃で払い飛ばし、無詠唱を行う俺。
ディアは炎を纏いし尾で、倒れ来る神木を払い焼き尽くした。
「助かるよ・・・」
「ぐっ‼︎」
「喰らえっ・・・、森羅慟哭‼︎」
「な・・・」
俺は左手先に現れた魔法陣を、ディアへの頭部へと伸ばした。
ディアの体内へと溶け込んで行き、其の銀色の毛並みに淡い光を纏うディア。
「な、何ん・・・、が、が、ガアァァァア‼︎」
「はあぁぁぁ‼︎」
「がっ、はっ・・・」
其の身を震わせ咆哮を上げながら崩れ落ちていくディア。
俺は畳み掛ける様に腹部へと平打ちを撃ち上げた。
完全に地面に崩れ落ち動かなくなったディア。
ディアとの戦いは、見事俺達の勝利に終わったのだった。
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