第147話


 翌朝、俺達4人は王都に向かい出発した。

 昨晩、あの後フレーシュから彼女の生い立ちについての話があった。

 先ずフレーシュの母親はサンクテュエール貴族で、其の家が没落し援助に乗り出したのがデュックだったという事。

 そして、デュックと母親の間に生まれたのがフレーシュで、ミニョンやアンベシルは異母兄妹に当たるという事。

 母親はデュックの妻でミニョン達の母親に当たる人物からの激しい嫌がらせに遭い、心労から寝たきり同然の状態で、王都でデュックからの援助を受け生活しているという事。

 彼女自身はデュックより、学院を卒業する迄ペルダンの娘として扱うと提案があったが、其れを断りミニョンのメイドとして暮らしている事。

 自身の存在を良く思わないデュックの妻から嫌がらせがある事と、城で会ったショーヴはデュックの妻の兄であるという事。

 今回の任務への同行は、デュックの自身の将来へ自立した時の助けとなるだろうという考えだと思うという事。


(まあ、以前にフレーシュがミニョンに見せた態度や、デュックに対する態度や重なる容姿を考えると何となくは感じていたが・・・)


 そういえば、ミニョン達もフレーシュとの兄妹関係は知っていて、其の事には触れない様にしてる様だ。

 フレーシュは、どのみち自身が学院を卒業すれば関わる事は無くなるし、お互い変に情を持たない方が良いと言った。


(紛争後のミニョンに対する態度は、姉妹喧嘩そのものだったと思うんだがな・・・)


 フレーシュは此の事は絶対にミニョンにだけは気付かれ無い様にしてくれと頼んできたのだが・・・。


「司様」

「え?ああ・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、何でもないよフレーシュ。其れで・・・?」

「ええ、司様、王都に報告に行った後、どうするのですか?」

「・・・ミラーシに向かいディアの引き渡しを要求する」

「なるほど、そうなのですね」


 司様、ねぇ・・・。

 まあ、ミニョンの前で呼ぶ事は流石に無いだろし、大丈夫だろう。


 其の後、王都に到着し国王へと報告に向かった俺達。


「うむ、ご苦労だったな、司よ」

「ははあ〜」

「今後、どうするつもりだ?」

「ははあ〜。その事で陛下に1つ許可を頂きたく」

「何だ、申してみよ」

「九尾の銀弧ですが、捕らえる事が出来るかは正直五分です」

「・・・」

「ですが、仕留める事なら可能と考えます」

「う〜む」

「出来れば、陛下より許可を頂きたく」

「ふむ・・・」

「・・・」

「良し、分かった。許可をしよう。可能であれば捕らえ、無理ならば首を持って参れ」

「ははあ〜」


 此れで良いだろう。

 最悪の場合は龍神結界・遠呂智で仕留める事が出来る。

 そうして謁見の間を後にし、城門迄出て来た俺達をミニョンとデュックが待っていた。


「司さん、お久しぶりですわっ」

「ミ、ミニョン・・・、それにデュック様」

「やあ、その後任務の経過は順調かい?」

「まあ・・・、悪くは無いかと」

「そうかい?なら良かった」

「もうっ、お父様ったら、司さんなら当然ですわっ。ねぇ、司さんっ」

「あ、あぁ・・・」

「ははは、ミニョンは司君に首ったけだね」

「も、もうっ、お父様ったら・・・。困りますわ、ねえ?司さん?」

「は、はは・・・」


 俺とミニョンの距離約5センチ。

 此の状況での近すぎる距離に俺はかなり、ドギマギしていた。


(デュックの言葉と笑みの意味を考えたく無いなぁ)


 そんな、俺に助け船が出た。


「お嬢様」

「あら、フレーシュ。貴女も司さんのお仕事、ちゃんと手伝えてますの?」

「当然です」

「そう。なら良かったですわ」

「それより、司様がお困りですよ」

「えっ、あら、気が付きませんでしたわ。すいません、司さん」

「あ、ああ・・・」


 いやいや、気付かれたく無いんじゃなかったのだろうか?

 フレーシュは完全にミニョンの前でも、俺への呼称を間違えていた。


(ただ、ミニョンの鈍さのせいで気が付いていない様だが・・・)


 俺は胸を撫で下ろしたが、デュックはその変化に違和感を感じている様だった。


「そういえば司さん、何時頃出発するのですか?もし、お時間が有れば我が家に・・・」

「悪いなミニョン。直ぐに出発するんだ」

「そ、そうなのですの・・・」


 俺はミニョンとデュックに別れを告げ直ぐに場を去ろうとした。

 其の背で・・・。


「行って参ります、お嬢様」

「ええ、しっかり務めるのですわ」

「ええ・・・」

「フレーシュ」

「行って参ります、おと・・・、旦那様」

「フレーシュ・・・⁈ああ、気を付けて行って来なさい」


 そうして、再びミラーシへと到着し、エルマーナと対面した俺達。


「九尾の銀弧、ディアはミラーシより追放した」

「・・・」


 エルマーナより告げられたのは、到底承服出来無い事実だった。

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