第110話
「・・・う、うぅん、・・・ん?」
閉じていた、瞼に注ぐ酷く煌びやかな光に俺は半ば強制的に意識を引き戻されていった。
開かれた瞳に映るのは、過度な装飾を施され本来の仕事を忘れさせられる様な、見覚えの有る様な、然し初めて見るシャンデリアだった。
「んっ・・・、いっ、つぅぅぅ」
徐々にハッキリとしてくる意識に、身体の感覚も取り戻していくと、自身の左頬から全身までに響き渡る様な痛みを感じた。
「此れは・・・、そうかぁ」
そうだった俺は確かケンイチとの果たし合いに応じて、拳撃を受けてダウンしたんだった。
自身の痛みの原因を思い出し、俺は身体を起こそうとしたが、未だ首に重みを感じ頭を上げる事が出来なかった。
「何て重い拳なんだ・・・」
サンクテュエール軍最強の名は伊達では無いと言う事か、あの時其の身から放っていた淡い光の正体も気になった。
「くっ」
ただ何時迄も此のままでいる訳にもいかず、此処が何処か確かめる必要があった。
瞳に映るシャンデリアという稽古場には不相応の代物。
何より野外で倒れた筈なのに・・・。
俺は頭よりはマシな状態の手を地面に着き上半身を起こそうとした・・・、が。
「うわっ・・・、ん?」
地面に着いた筈の掌は、柔らかな感触に深く沈み、まだ重さの残る頭は引かれる様に落ちて行った。
左頬から落ちてしまい、一瞬激痛を想像し力一杯目を閉じてしまった俺の頰には、想像していた痛みは感じられず、きめ細やかなシルクの様な肌触りが伝わってきた。
「あれ?・・・え、え〜と」
頬に伝わってくる柔らかな感触と、痛む頰に心地良い穏やかな暖かさに目を開けてみると、其の瞳には純白の逆三角形が映った。
「ん、んと、何だ・・・此れ?」
純白に煌めく逆三角形へと手を伸ばし、其の頂点を指で触れてみた。
「う、ううぅん・・・、んっ」
「ん?何だろう?」
何か声がした様な気がするが・・・?
まだ頭がボーとしてるので、聞き間違いかと自信を納得させ、指で頂点を突いたり撫でたりしてみた。
「あっ、ん、あん〜、・・・んぅ?」
「・・・」
頭に響く心地良い高音のハーモニーに、興奮を覚えた俺の指先は艶めかしく蠢き、純白の頂点の先へと、閉ざされた闇の中へと這い侵入して行った。
其の瞳では視認出来無い暗闇の中は、先程迄撫でていた場所よりもフレキシブルな触れ心地で、俺は指先を乱暴に喰い這わせながら遊戯の刻を過ごした。
「あっあっ、あんっ、あぁぁ‼︎だっ、めえぇーーー‼︎」
「・・・」
俺の意思を超えた先で、愉快そうに蠢く指先に暖かな湿り気を感じ、其の湧き出る先へと這って行くと、今迄よりも一層柔らかな感触に辿り着いた。
其の触り心地は今にも蕩ける果実のゼリーの様で、摘み、撫で、掻き混ぜると極上の果実に歯を立てた時に、頭に直接響く様な瑞々しい音が耳元で跳ねた。
「あんっ、うぅぅぅうん、ん、んっ、いやあぁぁぁ‼︎い、いっ、ちゃ・・・、んっ」
「・・・ん?」
(あれ?何処かで聞き覚えのある声だな?)
「もしかして・・・、ミニョンか?」
「んんん、は、は・・・いっ」
消え入りそうな声で返事をしてきたミニョン。
ようやく自由に動かせる様になった頭。
俺は身体を起こし辺りを見回した。
広がる整理の行き届いたファンシーな空間。
俺はベッドの上に居て、其の枕元にはミニョンがぺたんと正座していた。
「此処は・・・?」
「ふぅ〜、わ、私の部屋ですわっ」
「ミニョンの?何故?」
「昨晩宿に司さんが戻らないと連絡が有り捜索し、軍の稽古場で司さんとケンイチ将軍を発見したのですわっ」
「ミニョンがか?」
「え、えぇ・・・」
「それで、俺の介抱を?」
「勿論ですわっ、他の者に任せられる訳ありませんわ‼︎」
「そ、そうか、すまなかったな、ありがとう」
「と、当然の事ですわ‼︎」
何故か頰を紅潮させ、語尾に力を込め声を絞り出すミニョン。
ミニョンは俺が戻らないとルーナから連絡を受け、直ぐに捜索を始め俺とケンイチを発見した後、ケンイチを軍に任せ、俺をペルダン家の屋敷へと運んでくれたとの事だった。
(そうか、結局果たし合いは両者痛み分けだった訳か・・・)
最後の森羅慟哭は決まったと思ったのだが、ケンイチは強靭な精神力で俺を道連れにした訳だ・・・。
俺は恐怖と共に何処か尊敬の念も抱いてしまうのだった。
(まあ、リバースは余計だったけど・・・)
俺は其れを思い出しミニョンに確認すると、意識が戻らなかったので、まだ拭き取りしか出来ていないとの事だった。
「すまない、風呂って借りれるか?」
「え?お風呂ですの?」
「ああ、無理なら宿で浴びるから良いんだけど?」
「い、いえ、大丈夫ですわっ。でも・・・」
「ん?」
「続きをして・・・」
「続きって?」
「うぅぅ、な、何でもありませんわ‼︎」
「そ、そうか・・・」
何処かソワソワと落ち着き無い様子で俺を風呂へと案内してくれたミニョン。
俺は泊めてくれた事のお礼をデュックに伝え様としたが、屋敷は今俺とミニョンだけで他の者は出掛けているらしかった。
(まあ、フレーシュの件もあるし、お礼の機会はあるか・・・)
ミニョンに連れられたペルダン家の風呂は、リアタフテ家の其れよりも広かった。
俺は先ず髪と顔を重点的に洗い流した。
(流石に拭き取りだけでは不安だしな)
「お、お湯加減はどうですの?」
「え、ミニョン⁈」
「うぅぅ」
「ど、どうしたんだ?」
「お、お背中流しますわ・・・」
「・・・」
丁度俺が顔を洗い目元のお湯を手で払うと、其処にはタオルを其の身に巻き付けたミニョンが居た。
俺は追い出す訳にもいかず、自らの背をミニョンに向けた。
きっとこんな事初めてなのだろう、ミニョンの手つきは決して気持ち良いものでは無かった。
(だけど、此の空気は心地良いのか?)
ミニョンはお湯で俺の背を洗い流し、自らの髪に取り掛かった。
「ふぅ〜、うぅぅ」
お湯で髪を濡らすミニョン。
いつもは高い位置でドリル状に整えられた髪は、下ろしストレートになると背中の半ばまで届き、洗うのに苦労していた。
「え?司さん?」
「手伝うよ」
「あ、で、でも・・・。あ、ありがとうございますわっ」
伸ばされた俺の手に戸惑うミニョンだったが、躊躇は一瞬で直ぐに受け入れた。
ミニョンの髪は日頃のイメージとは違い、掬うと掌に溶け込みそうな錯覚を感じた。
洗った髪をお湯で洗い流し、ミニョンが顔を手で覆った刹那・・・。
「きやっ、司さん・・・、あんっ」
「ミニョン‼︎」
「あんっ、んっ、うぅぅぅ、んっ、来て下さいまし‼︎」
「っ⁈」
背後から強引に抱き締めた俺に、自ら其の身を守っていたタオルを剥ぎ取り、其の背を俺へと這わせてきたミニョン。
俺は自身から襲い掛かったにも拘らず、何故か既に最高潮に達していたミニョンに激しく求められ困惑のままに吸い取られていった。
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