アダムとイブ

勝利だギューちゃん

第1話

時は21××年。

人類の進歩はすさまじく、一般人でも宇宙船を手にいれる時代となった。


しかし、基本的には、いつまでも変わらない。


僕は孤立していた。

彼女はおろか、友達もいなかった。

誰も僕には、興味を示さなかった。

おそらく、背景という認識すらないだろう。


でも、それでも構わない。

僕も他人には興味がなかった。


本来なら引きこもりのニートになるところだが、それをしなかった。

世間への抵抗であり、挑戦状だった。


でも、世の中には物好きな女もいるもので、僕に積極的に話しかけてくる子がいた。

最初は、「どうせ、からかってるだけだろう」と、無視を決めた。

でも、それでも構わず声をかけてきた。

いいかげん、うざかった。

いずれにしても、僕に好意を持っているわけではあるまい。

それは、確かだろう・・・


しかし、もう毎日のように声をかけてくる。

いい加減にしてほしかった。


「何が目的だ!金か!」と、怒鳴り散らした事もあった。

でも、彼女は「君が好きだからだよ。」としか言わなかった。


世間の僕に対する目は、日に日に強くなっていく。

(俺が何をした!)


同調圧力なのか?長いものには巻かれろなのか?


もう、この地球が嫌になった。

自分の事は抜きにしても、争いやもめごとが絶えない。


僕は意を決して地球を逃げる事にした。


そして、宇宙船を買った。

ニートにならず、働いていたのは、このためだ。

人の住める星に辿り着けるとは限らないが、この地球にいても殺される。


そして、いよいよ地球を脱出する日が来た。

未練も悔いもない。ようやく解放される。

嬉しさがまさった。


スイッチを押す。


宇宙船は、ものすごい勢いで、上昇し大気圏に突入する。

そして、地球は見えなくなった・・・


ほっと一息した時、ガサゴソと音がした。

「誰かいるのか!」

音のする方を見ると、あの彼女がそこにいた。

「ああ、見つかっちゃった」

彼女は照れ笑いを浮かべる。

「どうして、ここにいる!」

「言ったでしょ。君が好きだからだって」

ここにきて、ようやく彼女の意図を理解した。


「後悔しないな・・・」

「うん」

「じゃあ、一緒に行くか・・・」

「うん」


熱い抱擁をかわした・・・


数日後、ひとつの星に辿り着いた。

自然に囲まれた星で、地球によく似ている。

しかし、人の姿はない。


僕たちは、アダムとイブになった・・・

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アダムとイブ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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