最終話 成り行きで群れた腐れ縁、もう戻らぬ時を思いながら彼の者は空を見ている

 勇者王を倒した我々、彼らはひと息つき談笑してた


「ふう、何とかなったなみんな。これでまた畑仕事に戻れる・・・・、かもしれん、受け入れてくれればな…」


「もう、残弾すっからかん、船もオシャカ。楽しかったけどこれからどうするかね」


「魔族側も人類側も、大分疲弊したでしょうからもう大きな戦いはしばらく起きないのではないでしょうか? 僕が思うに我が死が人間界に居る限り、魔族に対する抑止力になるでしょうし」


 談笑の中に聞き捨てならない物があった


「おい、それでは私が人類を守っている様ではないか」


 他の者達の反応は・・・


「結果的にはそうなるか?」


「魔王倒せるような勇者は魔王に匹敵する何かって言うし、逆もアリなんじゃないのかい?」


 ・・・どうやらそう言う認識らしい、少しじゃれ過ぎたか


「そんな仮にも魔族の頂点に立った事も有る私が、その様に認識されるなど屈辱だ。・・・・よし、再び魔王軍を組織し直して人類に宣戦布告をするか」


「待てバルト!それはシャレにならん!」


「大丈夫だ、次はちゃんと楽しめる様に加減する」


「まったく信用出来んわ!」


 エルウッドは喚いているが、バルディはむしろ嬉しそうだ


「組織としての我が死の勇士をみれるということですね♪」


「なんでバルディは嬉しそうにしてんだよ!」


 騒ぐエルウッドに割り込んで、フランチェスカが門を指差し発言した


「取りあえずさ、あの勇王が開いた門をどうするか決めない?」


「それもそうか、ついでにどの様な造りになっているか見学していこうではないか」


 そして私たちは門の場所まで行った


「デカいなぁ…。どうするフラン、壊しちまうか?」


「魔族はこれが無くても自由に人間界に行けるんだよね?」


「上位の魔族ならばな。しかし、お前達を魔界に招き入れた様に、術者以外の者も転移させる実力が有る者は少ない」


「ふむ…、我が死よ、人類側としての発言ですが今後の為、門は残してもらいたいと僕は考えますが、我が死はどうお考えで?」


 壊すか残すか・・・、どちらが面白いだろうか…。んむ?何かおかしいぞ


「この門…、異様に熱を持っているな」


「そうだな、こんなもんを潜って来たヤツラ? ぽいっと」


 エルウッドが石を門に投げると、石が溶けてしまった。それを見て他の者が叫ぶ


「これ明らかにおかしいよ!」


「不穏ですね・・・、僕が入ってみて来ましょうか」


 門をよく見るにこれはマズいな


「この門、魔界に通じると同時に、魔界の大気中のエーテルを吸い上げて稼働している様だな。設計ミスで過剰供給になっているが…、このまま放っておけば繋がった両世界が吹っ飛ぶか?」


「冷静に分析してる場合か!」


 相変わらずエルウッドは騒がしい男だ。こうなれば打つ手は一つしかあるまい


「最悪の被害を生む前に破壊する、世界の半分は死の世界になるだろうが全滅するよりはマシであろう」


「よし!何を手伝ったらいい?」


「足手まといだ帰れ、ここは私一人で十分だ」


「バルト? うわ!」

「きゃあ!」

「我が死!」


 私は人間界のゲートを開き、彼らをその中に入れた。安全に転送させるには少し時間が掛かるな


「皆の者、これまで余のお供を務めご苦労であった!」


「死ぬ気かバルト!?」


「死にはしない! 見くびるなよ。付き合ってくれた礼だ、余の名において世界の半分を貴様らにくれてやる!生のある世界で好きに生きよ、だが死の世界は余の領分だ、勝手にやるさ」


「ふざけてるのかい!」


「ハハ、貴様らはもう人類最強の勇者なのだ、誰も文句は言うまい!」


「我が死ぃ!」


「さらばだ、またいずれ会おう!」


「まっ‥…」


 勇者達の戦争を完了した。さて最後の仕上げだ


「最大火力でなくてすまないが、盛大に散るがよいガラクタがぁ!!!」


「ガ・・・・」


 この様な強い爆発は・・・、余もさすがに・・・・体験した事はないな・・・





       ありがとう、楽しかったよ勇者達






             ・

             ・

             ・





 あれから3年後、俺は今ケーキ屋をやっている。一級品の粉が作れないのなら二級品の粉でも美味しく焼けるケーキを作る事にしたのだ。パンが売れなければケーキを焼けばいいじゃないと俺トーマス・エルウッドは思ったのだ


「せっかく最後の戦いでスッキリ出る所をモヤモヤさせやがって、馬鹿野郎が」


 俺は即席で作ったバルトの墓に焼き上がったケーキをお供えした。中には以前フランがもぎ取った手が入っている。魔族に墓とか関係なんじゃないかい?と言って大分ごねられたが、アイツには死者をいたわる気持ちとかないのか


「俺、なんでアイツと結婚したんだろ?」


 たまに疑問に思う、フランはやっぱ物を言うのは火力さねとか言って、賭け事でたまに儲けては新しい銃を買いだめしてる、この間リボルバーとか言うものに大金をはたいていた


「もとが海賊だし、しょうがないか。それにアイツよりはマシだ」


 バルディは何故かバルトの友人のマミコの工房に入り浸り、怪しげな機械の開発実験に付き合ったり、無茶な魔法の鍛練をしている。死ぬつもりかと聞いたら、僕を殺せるのは我が死バルトさまだけですよ!っと言っていた


「現実を受け入れられなかったんだな、可愛そうに」


 こうして空を見上げているとバルトが今でも俺達を見守っている気がする


「安らかになバルト・・・」





























一方その頃、魔界では


「魔王様バンザイ!」「魔王様ぁ~!」「魔族に栄光あれ!」


 新たな魔王の就任式が行われていた


「皆の者!静まれ!」


「「御意!」」

 

 そこに新たな魔王が演説を始まろうとしていた。大量の魔族を前にしても憶する事に無い威厳を放っている。・・・と言うより就任式は二回目なので慣れたものだった。つまり”私だ”


「者どもよく聞け! また改め魔王に就任したシュエル・バルトである! その垂れた愚鈍な首を上げ、鹿と目に焼きつけてが良い!」


 面倒なので抵当にスピーチを切り上げ本題に入る


「皆の者、ついに人類との戦争を再び始める準備が整った! さあ、ともに楽しもうぞ!!」


「「おぉぉー!!!」」


 スピーチを終え玉座に座り、どういたぶってやろうか思考する


「くく…、どう料理してくれようか勇者共・・・、楽しませてくれよ。誰か魔鏡をもて!」


「はは!」


 魔鏡でさっそくあの三人がどうしているか見てみる事にしよう


「まずバルディは…、ラギと一緒になって兵器開発をしているのか」


「魔法の鍛練具も見受けられます。恐らく魔王様との決戦に備え修行していたのでしょう」


「まめな事だな、ヤツらしい。さてフランチェスカは、銃器のコレクションか、ヤツの能力を考えればこの数は厄介だな」


「皆、準備は怠っていないようですね」


「うむ、組織だった行動はしていないものの、少しは期待できそうだ。さてエルウッドは・・・む!?」


「こ、これは!」


 なんか見てはいけないものを見てしまった、何をしているんだコヤツは


「ケーキを焼いているな…」


「しかも設備の整った専門店らしき建物を根城にしている様ですね」


「ヤツは農奴だったはずなのに、何を間違えてこうなった? 他の勇者と違って戦闘の用意している様子もない」


「剣を完全に捨てていますね。しかも隣の建物は女勇者の住まいですね、ベットが二つ・・・、結婚もされてる様だ」


「あの女と結婚するなど、どんな男だ? む?」


「あの勇者、焼き上がったケーキをどこかに持って行くようですね?」


「しばらく追ってみようか」


「かしこまりました」


 しばらくエルウッドの動向を側近と共に見ていると衝撃的は事実が明らかになる


「こ、これは!?」


「魔王様の墓だと!? あの勇者め!すでに我々に勝ったつもりでいるのか!」


「死なんと言ったし、また会おうとも伝えたのだが・・・、もしやあの一件で余が死んだと思っているのか・・・」


「魔王様のお力を目の当たりにしておいて、あれしきの事で魔王様がお亡くなりになると思う者など居ようはずがありません! 現に他の2人は準備を怠っていないではありませんか! きっとこちらを挑発しているのです!」


「それもそうなんだが、ヤツはバカだからな・・・。ん?上を向いたな、覗いている事に気づかれたか?」


「何かしゃべっている様ですね・・・・」


 唇を読むと確かにこう言っていた。安らかになバルト・・・と


「上等だ!出来るものなら余を安らかに眠らせてみよ!」


「魔王様ッ、落ち着いて! こちらの声はあちらに届きません」


「わかっておるわ!」


 丁度いいタイミングで、血の気の多い魔族が出陣の許可を求めて来た


「魔王様!もう我慢の限界です、我らに出撃のご命令を!」


「丁度いい! 今すぐに指定した場所にあるケーキ屋を襲撃してこい!手段は問わん!!」


「初陣がケーキ屋!?」


「不満か?」


「い、いえ…」


「よし、では行くが良い。悲劇のヒーロー気取りにどちらが主役か教えてやれ!」


「御意!!」


 まったく、勇者に期待してしまった私が愚かだった・・・・・




 END

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隠居魔王の成り行き勇者討伐 倒した勇者達が仲間になりたそうにこちらを見ている! 軽見 歩 @karumi

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