第23話 今宵の勇者は大量です

 私は手に取ったスモールソードを勇聖者に向かって突いたが・・・・


「ギュッ」


 ・・・・難なく手の平で受け止められ、手の平を貫通したうねに握られてしまった剣先は横に引っ張られてしまった


「ブン!」


 そして無防備になった私の手元にむかって勇聖者のメイスが振り下ろされるが、その打撃をスモールソードのハンドガードで受け止める


「ガンッ」


「丈夫な剣ですね」


「いや、脆いさ!」


 私はスモールソードの剣身をワザと折れる様に捻り・・・


「カキンッ」


 ・・・・そのまま懐に入り勇聖者を押し倒して馬乗りに、そして剣の柄で死ぬまで殴りつけた


「ボコッ、バコ! ブコ、グチュ、グシャ!」


 殺したか、だが本番はこれからだ。どういった原理で不死モドキを実現しているのか見極めねば、だがすでに魂の気配は死体から感じられない


「グン!」


 背後から突然メイスが振るわれる気配がし、私は飛ぶようにして前に避けた。後ろを見ると死体はそのままで勇聖者が無傷で立っている


「まったくむごい殺し方をしてくれますね」


「楽に殺してくれとは頼まれなかったからな」


「ふん」


 勇聖者が死体を横に退かす様に蹴飛ばすと、死体は転がりながら塵となって消える。復活と同時に死体が消える訳ではないのか


「もう終わりですか」


「いや、少し疑問は増えたが手が無い訳ではない」


「少しは興味を持ってくれたようですね。ではそれにお応えして少し本気を出しましょう」


 勇聖者が手をかざすと周りに魔力が集まるりはじめ、その濃度はどんどん高くなっていき爆ぜた


「ブオン!」


「ふん、私も少しは本気を出さないとな!」


 勇聖者がの腕ごと破裂した魔力が私むかって飛んでくるのを、私はスモールソードを捨て新しい武器に持ち替えて両断した


「ザッキン!」


 四肢斬り鋏シシキリバサミ、両手剣に匹敵する巨大な両刃のハサミで特に霊体を斬るのに特化している物で、拷問用として愛用していたものだがヤツ相手には十分だろう


「グオン…」

「グオン…」


 両断した魔力が分かれたまま戻って来た、勇聖者ももう片方の手をかざして次の魔力を撃ち出そうとしている


「いくら撃ち、分かれようとも同じことだ」


「ブオン!」


 私は鋏をヌンチャクの要領で扱い、迫りくる魔力の弾を切り裂いていき


「パチ、チャキン、シャキシャキ!ザキン!パチン!」


 魔力弾が子蠅サイズになったところで回転しながら薙ぎ払って無理矢理消し飛ばした


「ブオン!」


 うむ、久しぶりに使ったが中々楽しめるなと思っていたが、気が付くと勇聖者の姿が無い


「どこに行ったか?」


 ふと天井が明るくなったのに気づいて上を見上げると、勇聖者が魔力を貯めていた。今度は身体全体を使って撃ち出すつもりらしい


「ほう、これは避けた方が良さそうだ!」


 私は壁に鋏を開いて当て回し、丸く切った壁に体当たりをして外に退避した


「ブオォゥン!!」


 外に出たと同時に建物が光に包まれ、衝撃波も特になく建物が大きくくり抜かれる。その光が止んだ中から勇聖者がまたもや無傷のまま現れた


「蘇る前提で身体を消耗品として扱い、人間の限界を越えた魔力を操る能力か。なかなか見事。私が知っているよりも多くの死を体験していてそうだな」


「恐らくそうですね。では戦場も広くなりましたしもっと派手に踊りましょう」


「うむ、もっと私を楽しませてくれ、退屈させるな!」


 私は勇聖者が構える前に踏み込んで細切れにした


「シャキシャキジャキ!」


 しかし肉を斬った以上の手ごたえは無い、霊体を切り裂ければ復活も止められると思ったのだが


「ゴン!」


 直ぐによみがえった勇聖者の攻撃が横から来た、大振りのメイスの一撃を鋏で受け止めそのままメイスごと勇聖者の頭の上部を断ち切る


「ふへ・・・」


 断ち切った後の勇聖者の口元がニヤリと笑うと同時に、死体が輝き始める


「これは、ッ!」


 死体は魔力を爆ぜる、私は不本意ながら結界で防御をしてその場を凌いだ


「結界を使ってしまった。これを使うと戦いが味気なくなってしまうので自粛したいたのだが・・・」


「グン!」


 直ぐに来る勇聖者の攻撃、しかし今度は受けずに躱して心臓を丁寧に貫いてやる、必要以上に傷めない様に優しく、殺した後も転ばない様に抱きかかえてやった


「ご休憩ですかぁ!?」


 満面の笑みで魔力を放とうとしている勇聖者がそう言ってきたが・・・


「いや、もう済んだよ」


「な、あ……」


・・・直ぐに目の焦点が乱れた身体を振るわせて膝を着いた、先ほど殺した身体もプルプルと震えている。なるほど、混線したのか


「こ、ここれ、は、わはは…?」


 混乱している勇者に説明をしてやった


「どうやら効いている様だな、どうだ、感覚が二つあると言うのは」


「え、ええ?」


「貴様は生き返る時に前の身体を残す、しかし同時に動かせる身体は一体だけだ。となると魂は一つ、そこで殺して新しい身体で蘇った後、殺した前の身体を蘇生させてみたのだ。身体は二つに対して魂は一つ、この矛盾にどう反応するかと思ったが、面白い結果になったな」


「あ、ああ…」


 私は跪く勇聖者をまた優しく殺してやる。するとまた新しい身体が出てきて地面に倒れた


「これを繰り返してやれば、こやつを殺れるかもしれぬな・・・。フフフフ」



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る