第22話 退屈な二人

 私は墓から這い出て、外で待ち構えていた勇聖者とお茶を楽しむ事にした


「うむ・・・、静かな場所だな」


「大戦中、死者がゾンビやグールになるのを恐れて墓場は郊外に移されましたからね、この場所もそうです」


「造りが新しく、どこかハリボテの様な感覚があるのは急造で作りそのままである為か。ここには貴様一人か」


「宿泊施設は有りますが、本来墓場の管理は泊まり込みで行うものではありません、ですが特別に僕の好きなように使わせてもらっています」


「なぜ」


「町で人々に説法するのが役目でではありますが、がらでは無くて。人々を助け、身を粉にして働くなどまっぴらごめんです」


「聖職者のセリフでは無いな、ましてや勇者のセリフでもない」


「ええ、まったく・・・、フフフ…」


「何がおかしい?」


「失礼、それほど寒いと言う訳では無いのに、口から霜の様に煙を出している姿がなぜかおかしくて」


「聖別された茶葉のせいだ、聖別された魔力が私の魔力と反応し結晶化して体外に排出されているだけにすぎん、空気に触れれば結晶化が解け四散するがな」


「一瞬ごくわずかな時間に、細かな魔石が出来ているわけですか。昔、妹に読み聞かせた絵本のドラゴンの様だ、宝石を吐き出す魔獣の・・・」


「ふふ、人間らしいおとぎ話だ。物欲にまみれている」


「そうですね・・・。しかし美味しそうに飲みますね、少しはお身体に悪いのではないのですか?」


「下級魔族なら死んでいるだろう、だが私には問題ない。それに茶は嗜好品だろう、楽しめるかどうかが重要であって、身体に悪いかは二の次だ」


「そうですか…。貴方のお茶を飲む姿を見ると何故か幼い妹を思い出します」


「今は男の姿なのだが中性的な顔立ちのせいかな。その妹は?」


「死にました、50年前に」


「魔族に手にかかってか?」


「いいえ老衰です、僕は直ぐに旅に出てしまったので妹の子供の頃と置いた姿しか知りませんが大切な家族でした」


「ほう、妹の復讐の為では無いとすると私に何のようだ、雑談をしたかった訳ではあるまい」


「はい、魔王様には私を殺してもらいたいのです」


「ほう」


「聖職者になったのもその為です、私の復活に謎を解き明かし死ぬ為に。ですが結局分かりませんでした」


「それで魔の王である私に頼みたいと」


「はい、引き受けてもらえますか」


「断る、何故私がそんな面倒な事をせねばならん」


「貴方なら僕を一瞬で消し飛ばせるでしょう」


「一瞬で消し飛ばしきれる保証もない。それに死にたい者を殺してもつまらないではないか」


「なら楽めれば殺しても良いと」


「出来るものならな、私も楽しめる者が居なくなって退屈している、はあ…」


「それで強者をもとめて魔王に?」


「それも結局無駄だった、今は隠居している身だ」


「・・・・・・ではその隠居中の魔王様にも楽しんでいただける様にしませんとね。幸いここは私に優位な場所だ」


「そうしてくれるか、せいぜい頑張るが良い」


 私と彼は互いに武器を手に持ち、戦いを始めた。・・・・・しかし、やはり勇聖者は呼び難いな

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