第16話 女海賊勇者との戯れを

 無事、海賊の女勇者フランチェスカの背後を取った私であったが


「くッ!」

    「タン!」


 振り向きざまに短銃で撃たれてた。いやはや、おてんばな娘だ


「全員退艦! 邪魔だよ退きな!!」


「しかし姉御…」


 彼女の命令に戸惑っている鬱陶しいボンクラが目障りだったので、先ほど撃たれた際に胸の間に挟まった弾丸を、胸をキュッと谷間に押し出し、指でつまんで弾いてやった、そのグズの脳幹に


「パシン」


「うごッ…!」


「おまえ!」


「すまない、実に汚らしいドブネズミだったのでついな。剣で斬り殺されるよりかは綺麗な死に様だろう?」


 私の言葉にお気に召さなかったのか、女勇者は身体に括り付けた幾つもの銃を私にむかって次々と取り替えながら放って来た


「タン!」

   「タン!」

 「タン!」

       「タン!」


 その銃撃をひらりと躱しながら踊っていると、周りのまだ居る船員の1人が叫ぶ


「船長の命令が聞こえたろ!全員退避!!」


 その声を聞いてやっと残りの連中が舞台から降りてくれた。私も踊っているだけでは飽きたので、弾丸の一つをスモールソードの剣身の根本で受け


「ギイイイイッ」


 溝に沿って切先に上ってくる前に、私は剣の先をつまんでしならせた


「グイ…」


 そして丁度いい所まで弾丸が進んで来たところで手を放し、弾丸を彼女に返してやった


「パシッン!」


「きぃ!」


 だが彼女に空中で撃ち落とされてしまった。この隙に少し距離を取って軽い雑談を挟むとしよう

 

「おおっと、いやはや見事見事。しかし銃とは引き金を引いてから火薬に着火し、弾丸が放たれるまで少し時間が掛かるものだが・・・、それは違うな」


雷管式パーカッションの銃さ、燧石式フリントロックの着火方式より発射ラグが圧倒的に少なく防水性も高い」


「ほう、人類の技術も知らぬ間に上がっていたか。まあ、気にする程でもないが・・・」


「これでも?」


   「タン!」


 不意に地面に捨てられた銃から火が吹き、弾丸が発射され私の脇腹に当たった。しっかり撃たれ投げ捨てられたはずの銃からだ


「これは?」


「まだまだだよ」

「タン」「タン」「タン」「タン」


 地面に捨てられた銃から次々と弾丸が放たれ、撃たれた場所から煙が上がる、対魔族用の魔弾による煙が上がる


「ほう・・・これが貴様の秘技スキルか」


地面の銃は歩き近づいて来る女勇者の隣に並び、まるで子供の絵本に出てくる玩具の行進の様に跳ねていた


「さあ、お食べ」


 女勇者が弾丸と火薬そして雷管を床に撒くと、銃のに引き寄せられるように移動して、銃のパーツがそれぞれ意志を持ったように動き弾込めを始めだした


「いやあ、まさか対魔族戦になるとは思わなくてね。一度撃ってから魔弾に込め直させてもらったよ」


「奇妙な能力だな。だがそれだけか?」


「いやまさか、ビックリするのはこれから」


 そう言って女勇者は銃を一斉に身体のホルスター戻すと同時に、左右に合った船の大砲をこちらに向けた


「操れるのは銃だけでは無いか・・・」


「そう、私の所有物なら自在に操れるのさ魔王様」


「「ドンン!」」


 大砲が放たれ、私はそれをわざと受け止め後ろに飛ぶと、鎖がどこからか伸びてきて船の帆柱マストに縛りつっけられてしまった。なるほど


「ハハ、やはり気づかれていたか。しかしなるほど、貴様の細腕で砲弾を跳ね返すところを見て違和感を覚えたが、・・・あの様な芸当が出来たのはあの砲弾が貴様の所有物だったからか」


「ご名答。でもアンタなんで女の格好をしてんのさ? まさかあの変態とデキてるじゃ・・・」


「馬鹿を言うな、少しからかうのに都合が良かっただけの事、いつでも性別は戻せる、この様にな・・・」


 私は慣れ親しんだ男性型の身体に戻ると、鎖は更に強く私の身体を締めあげた


「何さらりと男に戻って拘束を緩めようとしてるんだい、油断も隙も無いね」


「ただ容易く元に戻れる所を見せたかっただけなのだが・・・。それよりいいのか?」


「なにがだい?」


「私を船首像の女神の様に括り付けて良いのかと聞いている。私に祈っても加護などない、あるとすれば災いだけだ」


 私は嵐を起こし海を荒れさせてみせると、彼女は倒れそうになりながら銃をこちらに向けてきた。全ての銃を浮かせて狙えば火力も相当あるだろうが、どうやらそう言った芸当は彼女には出来ない様だ。もう潮時か・・・


「ふざけるな!」


 「「タン!タン!タン!」」

「「ドン!ドン!ドン!ドン!」」


 銃と大砲の一斉射撃を受け、私を縛っていた鎖がマストごと消し飛んだ


「おいおい、折角拘束したと言うのに、その縛った物まで吹き飛ばしてどうするのだ」


「まったく効いてない!? 撃たれてから大人しくなったのはワザとかッ」


 やっと気づいたのか、だが私の真意では気づいてない様だ


「フフ…、それなりに能がある獲物をいたぶる時はな、全力を出させて、それを真っ向から容易くねじ伏せた時の絶望する顔を見るのが最高なのであろう」


「舐めたマネを!!」


「さあ!もう後は無いぞ!全力以上の物をひり出して立ち向かって見せろ!」


 先ほどの私への攻撃で半壊した船の上、さらに荒れ狂う気候、絶好のシチュエ-ションだ!・・・だったのだが汚物が這い上がって来てしまった


「うぐっ・・・、海が荒れて助かったぜ」


「キサマ変態!?」


「灯台下暗しってね、船長の船の中なら砲撃は来ないだろ! 俺が撒いちまった種だ…、刈り取ってやるぜ! このエルウッド様がよ!」


 一気に面倒くさくなった・・・・

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