第17話 勇者VS勇者と、不機嫌な魔王
せっかく女勇者とこれから決着だというのに、こっちのゴミ勇者まで合流してきてしまった
「さあ、勇者同士で遠慮なくやろうぜフランチェスカ!」
「さすが魔王も手を焼くストーカー、しつこいね!」
何やら私と一緒に行動していた事でエルウッドの評価が不当に高くなっていないだろうか? 私から見てもゴミだぞソイツ
「せい!」
エルウッドが一気に踏み込込んで放った斬撃を、女勇者が銃を二挺捨てつつ小振りな
「「タタン!」」
地面に落ちた二挺の銃はエルウッドに向かって火を吹くが、難なく躱される。女勇者も自身の実力以上の戦いをしようと一気に殺気立つ
「おおっと、危ねえな」
「これは序の口よ!」
エルウッドもこの事態に責任を感じているのか、いつになく真面目な顔をしている。だがそのやる気は要らん。そんな私の思いと裏腹に戦いもヒートアップしていく
「ブゥン!」
「タン!」「タン!」
もし神の様に私の心を覗き見ている超常的存在が居るなら一つ聞きいてみたい。人類側が最終局面で増援が来るのは美談として良くあるおとぎ話だ。だが魔王がそれをやったらどうだ?
「やるな!」
「アンタも変質者にしてはッッ!」
これから最終局面だと言う時にラスボスの前に中ボスが1人しゃしゃり出て来るんだ、むかつくだろう。魔王は至高かつ孤独でなければならない、それが私の美学だ。そしてもっと不味いのは周りの船から聞こえてくるように・・・
「姉御の船に変態とあのアマが居るぞ!」
「あれ? 似てるがあの黒装束の男じゃね?」
「本当だ、親戚かアイツ?」
・・・エルウッドがこの船に来た事で一気に
「なにボサッっとしてるんだ野郎共! 私ごとこいつ等二人を地獄に送ってやりな!」
女勇者フランチェスカが不愉快な命令を出してしまった。しかたがない、突然の命令に奴らが戸惑っている隙に
「何言ってんですか姉御!」
「拾ったヤツの話では退艦命令を出したそうだ」
「はなから心中する気だったていうのか!?」
「姉御の命令だ!信じて実行しよう!」
悪いがそうはさせない。今貴様らは私が作り出した嵐の中に居るのだ、まとめて沈んでもらおう
「ジャアアァァァ・・・・・」
よし、奴らは渦に巻き込まれて沈んで行ったな
「ドシャン!」
そうだ、こいつ等は沈んでも浮き上がってくるんだったな。面倒だ、下手に頼み事をすると後で図に乗りそうで嫌なんだが
「…エルウッド、周りの雑魚を頼む、その女は私の獲物だ」
「え、射程距離も破壊力もバルトの方が上だろ? 一気に吹き飛ばしてやったらどうだ・・・。あ!やっぱ砲弾跳跳ね返されたのを根の持って…」
現時点で図に乗り過ぎだ、このダメ勇者め。私は船に置いてあった樽をひっくり返して中のリンゴを捨て・・・
「おい何しやがッ」
・・・樽の中にエルウッドを詰めて魔力で補強しつつ底の方に魔力を充填、大砲の様にエルウッドを他の船に撃ち込んでやった
「塵になってこい!」
「ドン!」
よし、これで邪魔者は居なくなった。さて・・・
「待たせたな貴様、さあやろうか」
女勇者に声をかけたが、彼女は今まで遊んでいた玩具を取り上げられて目が点になってしまっている
「さっきの男はホント何だったの?」
「ただの鬱陶しい寄生虫だ。有益なのか害悪なのか不明確なのが始末が悪い」
「ハッ、戦時中の時の様に一歩的に命を狙われる方がマシだったとか?」
本当にそうだから困る
「前の男の話を何時までも話すのは無粋だぞ」
私は彼女の流儀に合わせて銃を向けた。まあ彼女の最新式の銃ではなくフリントロックの銃なのだが。彼女も一丁の銃を手に取って告げた
「もう面倒ね、一発で終わりにしましょう」
「決闘か、いいだろう」
早く撃つだけなら銃の発火装置の性能の違いでこちらが圧倒的に不利なのだが、身体能力の差でこちらが圧倒的に優位、意外と面白くなるかもしれん
「オリハルコンとミスリルの合金に魔術処理を施した特別製の銃弾。一発しかないけどアンタでもこれはキツイでしょうね」
彼女は短銃を手に取り弾の説明をして、銃にその弾を押し込んだ
「私はクラシックな銃を選ぶが、弾はガーネットの芯を持つ魔弾だ。それなりに効くぞ」
私は二つの銃身を持つ二連式の銃を選んだ、重く早撃ちにむいてはいないが良いハンデだろう
「じゃあ、背中合わせに立って、5歩あるいたら振り向いて撃つ。これでいい?」
「ああ、異存はない」
私は女勇者と背中を合わせ立ち、一歩一歩と進む
「1…」
「2…」
数字を数える度、歩くスピードがやや速くなる
「3」
「4」
そして最後の一歩
「「5!」」
振り向きざまに放たれる2つの銃弾、手加減していては私の銃は間に合わない、だから彼女を撃つ前に彼女の弾丸を撃つ!
「タン!」
「タン!」
だが思わぬ誤算が、女勇者の銃弾の初速が予想以上に速い。恐らく二倍の火薬を詰めて発砲したのだろう。無茶をする
「カッッン!」
だが私には無駄だ、多少早くともしっかり見据えて射ち落すまで
「タン!」
そして第二射で彼女の腹を打ち抜いた
「うっ! かっぁ!」
床に崩れる女勇者、同時に船も軋みだす。半壊してもこの船が崩れなかったのは彼女が能力で補強していたからなのだろう、しかしそれが今なくなったのだ
「ガシャラララン!ガラア!ガン!」
海賊船が彼女と共に、荒れた海に角砂糖が解けるように崩れていく。そこで私はやっと気づいた
「お、ハハ! 中々やるではないか」
私が撃った彼女の銃弾は撃たれてもなお力を残し、気道が変わる程度に止まった。そしてその銃弾が私の左腕をもいでいたのだ
「まあ、こんな傷も直ぐに治ってしまうのだがな。さらばだ勇者達よ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます