第8話 用済み勇者のショータイム

 勇者と共に城の瓦礫の中に埋まった私だが


「ああ、まったく…。人類製のガタが来た骨董品の城だと言う事を考慮するべきだったな。服が汚れてしまった」


 瓦礫から這い出し勇者を引き上げて、勇者の意識があるかを確認した


「おい、生きてるか」


「ああ…、殺さないのか?」


「それは司法に委ねよう。それが貴様らのスタイルだろ?」


「魔王がぁ?人間側の司法で? 冗談だろ」


「いいや、だから大人しくしてもらう」


「おいおい待てッ・・・・つ」


 私は勇者の口に瓶を突っ込んで毒を流し込み動けなくした


「よし、さっさと済ませよう」


 私は勇者を縛り上げ、担いで町まで帰った。そして・・・・


「これより重罪人、トーマス・エルウッドの処刑を執り行う!」


 ・・・・大衆の前で、勇者の処刑ショーのが行われた。執行人に勇者は引っ張り上げられながらギロチンに固定されている。その間、淡々と勇者の罪状が読み上げられていく


「この者は住居不法侵入!窃盗!器物破損等の行為を数千件繰り返し!」


 兵士が読み上げる罪状に勇者は茶化す様に相槌を打った


「戦時にオタク等兵隊が大勢でやった略奪の被害の方が多いんじゃないんですかね?」


「黙れ! 戦時の徴収と略奪を一緒にするな!」


「当の兵士自身が違いを分かってなかったみたいなんだが? 戦後に用済みになった軍が今までどうり業務を行った結果、盗賊団なんて呼ばれてるぜ。何もしてくれない軍の代わりに汚れ役を引き受けてくれる義勇兵ともてはやされている奴等も居るが…」


「黙れ貴様ッ! そしてこの者は盗賊団のアジトを襲撃し皆殺しにし、金品を強奪している! 罪人であろうとも他者の命を法の裁き無くして勝手に奪う事はもちろん、財を奪い売りさばくなど言語道断である!」


「その近くの村人達からは感謝されたよ。邪魔者が居なくなって、俺が売った武具で安く身を守れるってな」


「その村人共の多くが、自らが飢えたと見るや盗賊行為に走っているであろうが!」


「つまり俺…、いやアンタらが守っている善良な民草様は、武器を持たせ一皮剥いたら盗賊の悪党共と一緒だったてわけだな。それについては同感だ、反吐が出る」


 罪状が読まれる度に勇者の減らず口が炸裂して、見物人の中には笑いだす者まで居た、警備に当たっている兵士の中にもひっそりと苦笑いしている者まで居る。勇者め、なかなかの面白いショーにしてくれるではないか


「この者は盗賊相手には飽き足らず! 遺跡に入り貴重な財宝を略奪し、その地を守る精霊まで殺した! これら以外にも様々な悪事に手を染めている。よって本日!この場で!死刑に処す!」


「あ、それ国に依頼されたヤツは罪状に入ってないよな? さすがにそれまで咎められちゃ目覚めが悪いんだが・・・。色々思い出もあるしよ」


「黙れと言っている!」


 勇者は処刑台に固定された。最新の処刑道具でギロチンと言うヤツだが・・・・


「それでは刑を執行する! 何か言い残すことは?」


「早く死んだ仲間にまた会いたいよ」


「ギロチンを下ろせ!」


 「シュッ…ガッッ!!」


 ・・・・勇者の首にギロチンの刃が下ろされた。もちろん勇者は無傷だ、あんな物で斬れる訳が無い。そうでなければあの時古城で挽肉になっているはずだ


「・・・・もう終わりか? 痛くもかゆくもねえぞ」


「ッ!? しばし待て!次の刑を執行する!」


「頼むから半端なモノじゃなく、しっかり殺ってくれよ。苦しむのは俺なんだからさ」


 次は別の処刑台に勇者は固定された。ギロチンでダメなら古い方法で挑む様だ


「斧を持つのは久しぶりだ・・・」


「また仕事に戻れて良かったな」


「いや、退職金をもらって、畑を耕しながら静かに余生を過ごしたいと思ってたのに残念だよ」


「死刑執行人も大変だな・・・・。でも頼むぞ」


「ああ、楽に死ねる様にしっかり斬り飛ばしてやるからなッ!」


 斧を持った執行人は勇者としばらく話した後、その斧を勇者の首に振り下ろした


「ガッ!」


 しかしその秘術スキルを使った見事な斬撃も勇者には効かなかった


「なッ!?」


「何をやっている! さっさと斬りおとせ!」


「お、おう!」


 「ガンガンガンガン!」


 雨あられと勇者に斬撃を浴びせるが、勇者の首は一向に落ちない。そしてついに斧の柄の方が折れた


「バキンッ」


 それを見た兵士が声を荒げて指示を出す


「次だ!次の処刑法を準備しろ!」


 執行人が膝を着き呆然としながら勇者に聞いた?


「痛かったか?」


「いや麻酔が効いてるからな・・・、解毒剤はもってないか? 痛みは無いのに斬れてたらって思うと不安で」


「いや、斬れても無いし解毒剤も無いよ。執行人失格だな・・・」


「相手を苦しめなかった点は合格だろ」


「はは、それもそうだ。だがこれで安心して実家に帰れるよ」


「お疲れさん」


 しばらく待っていると勇者は太い柱に鎖で括り付けられた


「この邪悪なる者を聖火で燃やし火刑に処す!」


「いや俺…、魔族じゃないんで、聖火で炙られても普通の火で焼かれるのと大して変わらないんだが・・・・」


「着火!」


「話聞けよ!」


 どうやらもうやけくその様だ。全く不甲斐無い人間共め

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