第3話 食う者、喰われる者

 私は勇者討伐隊の後ろをついて行きながらティータイムを楽しんでいたのだが、何故か奴らは空腹を訴えはじめ暴れ出してしまった


「コケッコ」


 そんな奴らの前に一羽のニワトリが姿を現す、人里離れた荒れた林道でである。如何にも怪しいのだが


「ふへへ、丁度いい時に現れたぜ! 覚悟しろニワトリ!」


「コケェ?」


 先頭の大男がニワトリに槍を投げた。他の奴が行為に文句を言っていたが・・・


「バカ!そんな太いもんでさしたら潰れて食う分が減っちまうだろッ」


「ポスン…」


 槍がニワトリに命中するも、槍は刺さらずに地面に落ちた。予想外の事態に人間共は全員黙ってしまう。槍が刺さらないなら素手で捕まえてしまえば良いだろうに


「コケコッコォ~!!」


「・・・・コケコッコ……コケコッコォ~・・・・」


 ニワトリが大声で鳴きだし、森に鳴き声がこだまする


「な、なんだ?」


「段々大きくなってねえか? 鳴き声」


 そう、鳴き声のこだまはまだ鳴り響いており、その鳴き声は段々と大きくなっていった。奴らは混乱しているようだが理由は簡単だ、単に鳴き声が反響音ではなく、他のニワトリがさっきのニワトリの鳴き声に応えてながら接近してきているだけだ


「「コケゴケゴ~ォオ!」」


 ニワトリの軍団がイナゴの様に飛び回り、人間共を啄んでいく


「なッ!この!離れやがれ!」


「ひぃ、このぉ!」


「うわ~! 食われてたまるか!」


「これ、ほんとにニワトリか!?」


 このニワトリの凶暴性・・・、間違いなく勇者の手先だろう。昔に魔族部隊から報告を聞いた事が有る・・・・・


 ”村のを襲撃したさいにニワトリと遭遇、部隊の1人が戯れでニワトリを攻撃したが目立った外傷はできずニワトリは鳴き声を上げるだけにとどまる”


 ”しかしどこからかニワトリの増援が現れ攻撃した者を殺害、こちらも応戦するもニワトリの勢いは止まらず、建物の屋内に退避するまでニワトリの増援は止まらなかかった”


 ”部隊の生き残り全員が屋内に入ると、最初に攻撃したニワトリを残し増援部隊は消えていた。この奇妙なニワトリに対する注意勧告を該当地域に活動する全部隊に行う事を具申します”


 ・・・・などと言う報告が何件も上がっていた。あのニワトリに対する唯一の対抗策は屋内に避難す事だが、ここでは無理だろう。人間達も直感的に悟ったのか全力で走り始めた。私もスピードを上げる事にしよう


「くそ!キリがねえ!」


「このまま古城まで逃げるぞ!」


 だがしかし…、ニワトリの他にも他にも黒く丸っとした犬のようなモノに襲われたり、怒涛の勢いで押し寄せてくる羊の群れに幹部クラスの魔族がひき殺されたと言う報告まであった。勇者は動物を操る能力でもあるのだろうか?


「古城が見えたぞ!」


「もうすぐだ!がんば・・・」


「ぐえッ」


 奴等の1人がニワトリの攻撃を受けて倒れた、首をやられてどうやら致命傷のようだ。・・・・紅茶をお代わりしよう


「おい!しっかりしろ!」


「俺はもうダメだ・・・、どうやらお迎えが来たようだしな」


「お迎え?」


「紅茶を啜る死神が、俺を冷たい目で見降ろしてるんだ・・・・。もう長くはない」


 この男、死の間際に私の姿を視認できたようだ。まあ、今更どうでもいい事だが。他の連中は気づいていない様だしな


「がく・・・」


 私が紅茶を飲み干すのを待たずに息絶えたか。ニワトリにやられるとは情けない、軟弱者めが


「ちくしょーう! この鳥公どもをなぶり殺してやる!」


「おい!賞金首は!?」


「俺達の敵は顔を合わせた事の無いどこぞの誰かか? 違う!今ここで仲間の命を奪ったニワトリだろう!」


 素所も知れぬ獲物より、目の前の敵と言う事か? 理屈は分からんではないが・・・、お前はそれで良いのか?


「そうだな・・・」


「最後まで付き合ってやるぞ!」


 どうやらやる気の様だ


「いくぞお前ら!」


「「おう!」」


 愚かな人間共とニワトリの壮絶な戦闘が始まる!


「「「コケエエ!」」」


「「「うおおお!」」」


 まあ、数の暴力で直ぐに人類の敗北で終わるのだが


「ココ…コケコ・・・」


 ニワトリ共に無残に啄まれる人間達。茶番が終わった所で私はティーセットを

片付けて立ち上がりひと息つく


「普段は人間に飼われ食われるだけの存在に人間共を食わせる、なかなか良い志向だが・・・、これでは戦力差があり過ぎてつまらんな・・・・」


「コケ・・・」


 私はニワトリの一匹を鷲掴みにし


「後続の討伐隊もこいつ等に殺られても面白くない・・・・、絶滅してもらうぞ」


「ゴゲッェ!」


 私は黒き炎で捕食者気取りの家畜共を焼き払う事にした

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