第4話 おおっと、壁の中に居る

「まったく、数ばかり多くて時間っがかかってしまったな」


 群がるニワトリ共を駆逐し、ひと息ついていると。近づいて来る者達の気配を感じて私は振り返った


「次の勇者討伐隊か・・・、思ったよりも早く来たな」


 辺り一面に広がる、夕焼けに照らされたニワトリの焼死体を見ながら私は首をかしげ考えた


「この散らかりようは流石にまずいか? 警戒されて帰られても困るしな・・・」


 取りあえず人間四人の死体とまとめて焼死体を森に追いやったが


「鳥臭いな、これでは別の意味で怪しい。何かで密封できればいいのだが・・・」


 仮にここに巨大な鳥塚を作ったとしよう、もしそんな事をすれば不審に思った勇者おもちゃに逃げられてしまう恐れがある


「ふむ・・・・」


 どうしたものかと悩んでいると、あるアイディアが頭に浮かんだ


「この古城の中に隠してしまおう。なに、人間基準なら少々古い建造物だが、中の構造などたかが知れている」


 私は焼死体を持って古城の中の至る所に隠したのだが


「む、意外と早いな」


 もう討伐隊が到着してしまった。しかたがないので私も壁の中に隠れることにした


「よしお前ら!7000万を取りに行くぞ!」


「一山当てて、牧場でも始めるか」


「はは、俺は酒場が良いな」


「さっさと行こうぜ」


 また4人のパーティーの様だ。前の連中よりは期待できそうだが・・・


「ガハハハ! そうだな行こう!」


「気を付けろよ、こんな古い城には貴族の趣味で変な仕掛けがしてあるって話だからな」


「ハハッ、そんな百何年もたってる仕掛けが今更動くわけね・・・」


 そう言いながら屋敷に入った男の頭にシャンデリアが落ちた


「くっ!・・・おらぁ!」


 だが、その男はポールアクッスでシャンデリアを払いのけてみせた


「言ったそばから・・・よっ!」


 払いのけられ振り子のように戻って来るシャンデリアを次の男が風の魔法で更に吹き飛ばした


「おいバカ! シャンデリアで道が塞がったぞ!」


「後で引っぺがせばいいだろ」


 向き合って口論している二人を狙って、柱に絡みついたいくつもの竜の彫刻の口から炎が吹き出たが


「「せい!」」


 残りの二人が口論する二人を庇う様に、竜の彫刻を両手剣とメイスで砕く


「2人とも遊びすぎ」


「面倒だから、真っ直ぐ突っ切っちまおうよ」


「まだ仕掛けがあるかもしれん、俺達がシャンデリアを退かしている間、他にも仕掛けが無いかチェックしてくれ。もしかしたら抜け道があるかもしれないからな」

 

「はいよ」


 ひと段落ついた彼らは、城内を散策し始めたてしまった。まずいな


「この壁についてる燭台とか怪しくないか?」


「扉を開くレバーになってるとか? そんな物語みたいな仕掛けあるか?」


「シャンデリアって光源があるのに、燭台は余計だろ」


「そのシャンデリアがトラップとして落ちてくるから、予備の光源として燭台がいるんじゃないか?」


「あ、それもそうか」


 よし、そのまま燭台は無視して先に進めとは思ったが


「でも一応チェックはしてみるか」


 そう言ってその男は燭台を下に引き


「バコッ」


 燭台を根元からもぎ取ってしまった


「あらら・・・」


「ほら何も無いだろ・・・」


「ポト…」


 燭台と一緒にもげた壁の穴から隠した焼死体がこぼれてしまった


「なぜ燭台からローストチキンが!?」


「しかもこれ・・・、まだ温かいぞ。ハグッ」


「おいおい食うなよ!」


 片方の男が壁から出てきた死肉をむさぼり、もう片方の男が驚いているようだ。そんな二人を見てシャンデリアと格闘していた2人が不審に思い声をかけた


「おい、何かあったのか?」


「ああ、燭台壊したら根元からローストチキンが出てきたんだよ」


「なんじゃそりゃ・・・」


「毒は入ってないみたいだぜ。モグモグ・・・」


「そうか? 他にも壊してみたら色々出てくるかもな」


 なにやら面倒なことになった


「じゃあこの花瓶もぉ!」

         「バリン」


「うわ!こっちもローストチキン出てきた!?」


 奴らめ、そこらじゅうを壊し始めて、私がご丁寧に隠してやったニワトリの焼死体を暴き始めた。こんな神経図太い連中だったとは、これならあのまま焼死体を放置していても問題なかったかもしれん


「ここだ!」


 私の隠れた壁にむかって攻撃してくる気配が・・・


「バコッ」


 ・・・したので、壁の裏から手をそえて攻撃を防いだ


「意外と丈夫だなッ!」


「ゴン!」  「ゴン!」

   「ガン!」  「ガン!」


 連続でくる攻撃を軽く受け止めていたのだが


「こなくそぉーう!!」


「ボロ…」


 衝撃で石造り壁のブロックの一つが潰れて粉々になってしまった


「どうだ! 手ごたえが・・・」


「パコ」


 私は素早く別のブロックを壁から抜き取って、砕けたブロックと取り替えた


「あ、あれ? 確かに石を砕いたような感触が・・・」


 壁の前の男は、砕いた筈の石ブロックが無傷なのを見てあっけに取られている様だが、仲間に声を掛けられて諦めた様だ


「おい、チキンしか出てこないしもう行くぞ!」


「わかった、今行くよ!」


 奴らは古城の奥に進んで行った様だ、気配が遠のいていく


「まったく、無駄な手間をかけさせおって・・・・」


 私が隠れていた壁は、先ほどの攻撃のダメージで今崩れ去った


「ガラガラッ・・・!」


「さて、後を追うか」



 

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