僕と彼女の母

 信じられなかった――否、信じたくなかった。

 目の前が真っ暗になるというのはこういうことだったのかと、身を持って知った。

 出来れば一生知りたくなかった感覚だ。


 医師からは、しばらくすれば治るかもしれないと曖昧に告げられた。

 特効薬も対処法もない、いわば新型ウイルスのようなものではないかと言っていた。

 僕は彼女を抱き上げ、歩いて帰ろうとしたところを、彼女の母に呼び止められた。

「少し、話さない?」

 断る理由もないので僕は「はい」と言い、彼女の母は「ついでに家まで送るわ」と言って車を出してくれた。


 僕たちが車に入るなり、彼女の母は口を開いた。

「……夢菜のことは、聞いているかしら?」

 ……一体何の話だろう。

「その様子だと聞いてないみたいね。ならいいわ、私から話すわね」

 そう言って彼女の母は、先の医師より衝撃の事実を僕に突きつけた。

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