第699話 アイカとシルフィー(15)

 でも、そんな妻、女王アイカの甘えてくる様子など、全く気にもしない。止めない様子で健太は、自身へと妻らしく、太々しい態度をとりながら睨みつけてくるシルフィーへと詰め寄せようと歩行を始めだす。


 でっ、つけば〈ドーン!〉だ。


〈ドーン!〉とね。


 健太はシルフィーの華奢な肩を自身の掌で小突くのだ。小突いてみせるから。彼の背で相変わらず甘えている。しおらしい奥さま、妃さま化している女王アイカは、またもや自身の瞼を大きく開けて驚愕──!


(えぇ、えええっ! 私の健太が、異性に対して暴力を振るうのを初めてみた。……家のひとでもこんな事を。こんな荒々しい振る舞いをするんだ)と。


 自身の脳裏で呟きながら驚愕をするのだ。


 でも、女王アイカの驚愕は、これだけでは収まらないのだ。


 だって彼女の優しく可愛い。白馬の王子さまは、皇帝。王。主。夫らしい振る舞いへと変化──。更に女王アイカの面前で、変化を遂げていくのだから。



 ◇◇◇◇◇




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