第696話 アイカとシルフィー(12)

 まあ、とにかくだ。健太に馬乗りで、状態で甘えていた彼女、女王アイカなのだが。あれほど温和な自身の夫健太が。自身の目の前で、己の身。上半身まで起こしながら憤怒! 憤慨! 睨みつけ、シルフィーへと怒りを含んだ声音で不満、諫めをするのは、初めて凝視した訳だから。彼女は唖然、呆然、沈黙を続ける。


 でも二人、健太とシルフィーの二人は、紅玉の瞳の入った瞼を大きく開けている女王アイカのことなど気にした様子。素振りもみせずに。ジャポネの女王シルフィーは夫である健太の罵声を聞いても謝罪をする訳でもなく、『フン』と、鼻を鳴らしながら余所見。素知らぬ振りをして悪びれた様子もみせずにそっぽを向きながら。


「あなたがいつも、そんな感じと様子で、この娘(こ)。アイカさんに甘い。叱る。諫めることもちゃんとしないから。この娘(こ)が。アイカさんが平然とあなたを裏切るようなことをするのでしょう。だからウォン共々、少しばかり折檻。お灸を据えてやったのですよ。悪いですか?」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る