第662話 予期せぬ事?(11)

「お姉さま、健太さんに何がおきたのですか?」と。


 プラウム姫は、一応は姉の絵里へと問いかけてみるのだ。まあ、聞くだけ無駄だとは思いながらも。この場に近寄るだけ近寄り。何も問いかけることもしない。行為をしないで無視をすることは、久し振りに合う。自身の実の姉に悪いからと思うから。問いかけていたのだ。社交辞令としてね。


 でも、先程からこの場面、成行きを見てきた者達は知っての通りだ。狂乱したように、「あなた。あなた~」と、泣き叫ぶだけの母に詰め寄った二人。一樹と絵里の二人も、父を呼び泣き叫ぶ母、シルフィー自身の口から。幼い父健太に何が起きたのかまでは、未だ教えてもらっていないから。真意はわからない。理解ができない状態でいるから。


「さぁ、私にも解らない」と。


 絵里は、自身の首を振るのみなのだ。


「そうですか。そうですよね」、


「……お姉さまの言う通りで、お母さま自身は、何も言ってはくれないし。説明をしてくれない。だから当たり前のことですよね」と。


 プラウムは母であるシルフィーの泣き叫ぶ様子を凝視しながら呟く。


 そんな三人……ではなく。


「母上! 母上! 父上が! 父上がどうされた? どうしたのですか? 母上が泣き、泣かれるだけでは、我等には分りません! 理解できません! だからちゃんと我等に説明をしてください!」と、問いかける。


 兄一樹と合わせて四人の様子を凝視しているサラは、「(プラウム姉は、以前からサラ達意外にも兄弟姉妹がいることを知っていたんだ。この様子だと。それと健ちゃんが、サラ達の実に父だと言うことも知っている。わかっていたんだ)」とも思うのだ。


 でっ、思いながらサラは、「(それを知った上でプラウム姉は、健ちゃんの妻、妃になったんだ。……それでプラウム姉は、先程のサラのように、違和感や罪悪感を湧かし自戒するようなことはなかったのかな?)」とも思う。


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