第648話 逃走?(9)

「ライ! ライさんがいたよ! ライさんが……」と。


 歓喜をあげながら、また走り、逃走を始めだした健太。健太なのだ。


 そう、彼は、他の国へと向かい。走り始めたのだよ。だってあそこ、他の国の女王、雷神ライは健太の妃であり。女王アイカともしも仮に、揉める。夫婦喧嘩をして離別、別居をすることになれば、いつでも自分を頼ってこいと以前から。と、いうか? 同盟をしている両国間の親善を兼ねて訪れ。その都度健太。己の主と逢引きを繰り返している最中に。


「あんた~。もしも? あんたの身に何か~? 何か起きるような事があれば。他の国~。私を~。私を頼ってきてね~。必ず私があんたを~。殿を守ってあげるから~。分ったぁ~? あんた~?」と。


 健太に甘え、艶やかな声音でいつも言っていた。強請っていた。漏らしていたのだ。熱い吐息と嬌声と共にね。健太。己の主を愛おしく、労り。愛しながら。妻らしく囁いてくれていたのだ。

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