第642話 逃走?(3)

〈ザッ、ザッ、ザッ〉


〈ザ、ザザザ……〉


〈テクテク〉と、駆け足、走り、歩行へと切り替え歩く。


「ハァ、ハァ、ハァ……」と。


 荒い。荒くなっている、己の息を整えながら歩く健太なのだが。自身の頭を回すように動かし辺りを見る。見ながら確認──。更に遠くも彼は見渡すようにしながら確認を続ける。


「ここは、何処? 何処だろうか?」と、声も漏らしながらだよ。


 そう、彼は、健太は、自身が持つ、国と寝取られた妃と、その他の妃を捨て、と言うよりも? 余り下僕や奴隷と変わらぬ、只のお飾りの男王……。



 そう、西遊記の孫悟空ではないが、釈迦の掌の上でしか行動、遊ぶ、抗うことしかできない無力な自分に嫌気が差し。一から自分の人生を見詰め直し、やり直したい。それも、他種族の中に混じる。交じって、種族的な劣等感を味わい、己の骨身に染みるような余生を過ごす、再起を計るのではなくて、健太自身と同じ種族である人種の国、町、集落へと落ちのびて今後の余生を過ごしたいと彼は思っているようだから。


「ここまで逃げれば、エリエさんやウルハさんの部隊に掴まり。監禁。また此の国に連行、連れて帰られるということはないと思うのだけれど……」と。 健太は荒い息遣いをしながら独り言を漏らしたところで、『あること』を思い出すのだ。


「あっ?」と、「そういえば?」とね。




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