第638話 ウォンの誤算……(32)

 まあ、それでも女王アイカは、人種やエルフ種族の女性に比べれば大きな体躯をしている長身のオーク種族の女性だからね。いくら彼女が幼子のような振る舞いで暴れ、抗うことしかできなくても、手足の長い彼女の腕や脚は、彼女を強引に人気の無いところ。


 女王アイカと前王の健太が仲良く、夫婦として暮らしていた。掃除、手入れの行き届いた神殿、部屋ではあると思うのだが。


 その場、その場所へとウォンが彼女、女王アイカの二の腕を強引に掴み、握って、連れていこうとも、安易にはことが進まない。進まないから。


 彼、ウォンの口から「チッ」と、舌打ち。「くそ、歯痒い……」と、悪態が吐かれるのだが。


 女王アイカは、この場、この後に及んでウォン。自身の元彼、婚約者、主、夫だったかも知れない男から。自身の身を守ろうと抗う。抗い続ける。


「嫌! 嫌! 離して! 離してよ! ウォン!」、


「私! 私は⁉ 貴方~。アンタなんか大っ嫌い! 大っ嫌いだからぁ、あああっ! 」、


「私から! 此の国の女王から離れろ~! ウォン~!」と、泣き、叫びながら、と。


「誰かぁあああっ! 誰かぁあああっ! この者~! この男~! 狂乱している~! この男を取り押さえて~! 今直ぐに~!」と、自分達……。



 そう、此の国の女王アイカと、現時点での漢王になった。健太から己の武と力で奪い盗り。漢王となったウォン達、淫らな二人に愛想を尽かして、敵前逃亡──。元自分達の仲間であり。戦場では、優秀な司令官、大将軍閣下であった。元此の国の丞相であった女神さまの許へと逃げる。逃走を計る男達へと下知、嘆願をするのだが。





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