第639話 ウォンの誤算……(33)

 誰も女王アイカの下知を聞こう。聞いて助けようともしない。しないで無視──。暴れる女王アイカと、それを強引に引きずり連れていこうとするウォンとの二人………。



 二人の荒々しい様子を横目に見ながら。


「知るか!」


「自分で何とかしろ!」


「俺は女王アイカとウォンに対して……」


「俺達はうんざりした!」


「俺達は愛想を尽かした!」


「だから俺達は……」


「お前達二人に対して二度と忠誠を尽くす事はない……」


「忠義もだぁ!」


「この裏切り者の、敗北者達が!」


「だから女王アイカは自分で何とかしろ!」


「ウォンもなぁ!」と。


 この場! 戦場で! くだらない口論、良い争い。別れ話や離婚、離別、別居? の話しをしている王族の夫婦? の話しなど、聞く耳など持てるか! と。女王アイカと漢王ウォンに従っていた漢戦士達は皆、二人に悪態をつき、つきながら。我先にと、白旗を握り掲げているサラの許へと、女神さまに己の命乞いをするために駆け足で、二人を置き去りにしながら立ち去っていくのだ。封建制の此の国の漢兵から中央集権制であるジャポネの国の漢兵。勝利、戦勝の女神シルフィーの下僕となるために彼等は向かっている。いるからね。


 これで事実上、此の国は、ジャポネの独立戦争で敗退。敗戦をしたのだ。


 ジャポネの女王シルフィーが記した。【ジャポネ歴〇一年】の年にはね。と、同時に二人……。



 そう、女王アイカはその後、此の国の、只の象徴、主張……。女王としての軍馬を動かす権限は略奪されて、只のお飾り女王へと変わる。変わるのだ。この世界の時と美の女神シルフィーことアイカはね。


 でっ、もう一人の健太ことウォンの方はと言うと? 別の世界のアイカであるシルフィー……。元己の妻に生涯の忠誠を心から誓う。誓うから許して欲しいと懺悔して、別の世界の妻アイカことシルフィーは夫、健太に対して大変に甘い。甘いから寛大な処置として、もう一人の自分自身、健太のことを蔑ろにしたウォンのことを心から許すから彼は! ウォンは! 妻からから許しをもらい。もらったからね。


 この国と国とを巻き込んだ大変に大きな夫婦喧嘩は、『ウォンの誤算』で、あっさりと幕を閉じるのだった。


【ジャポネ歴〇一年】の年にね。



 ◇◇◇◇◇


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る