第631話 ウォンの誤算……(25)

 そう、優艶なダークエルフの女神、巫女、シャーマンの許へと漢達は誘われるように、次から次へと逃亡、逃げていく。逃げていくからウォンは、逃げる者達を追い。次から次へと襲い。殺してやりたいと思うのだ。先程、数時間前の健太との出来事のようにね。でも、あの時は、この場で泣き崩れている女王アイカに制御、とめられたので、彼の首をあげることはできなかったのだが。今回も一緒だ。と、言っても、彼を、ウォンの荒々しい殺戮を誰も制御、とめる者など誰もいないが。こちら側には弓を射る者、打てる者が誰一人といない。オーク種族は近接戦、肉弾戦を好み。弓を射る種族や者達を卑怯者、臆病、弱者達と罵る。蔑み、見下す傾向が古よりあるので、この場に弓を射ることが可能な漢戦士達などいない。


 だから逃亡兵の増加を抑える為に、見せしめとして殺戮をおこないたい衝動に彼は駆られてはいるのだが。そんな時間、時があれば、この敗戦濃厚な状態をどう打破して、此の国の女王アイカを連れて、逃亡するかを思案した方が上策となるので、無理な殺戮、と、いうか? 自身の名声値自体も、これ以上ウォンは下げる。地に落とすようなこともしたくはないから。


「ちっ」と舌打ちするしかないのと。


「もう、こりゃ、駄目だ……」と、言葉を漏らして、己も腹をくくり覚悟……。自ら死を受けいれるしかないと思い始めるのだ。ウォンはね。と、なれば?


 彼の横で泣き崩れている女王アイカへと視線を変えて。


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