第584話 ジャポネの覇王妃シルフィー(1)

「直ちに~。皆~。準備を~。準備をしなさい~」と。


 女性の甲高い声音での叫び、下知が城内──。小さな三階建ての和式の城──。天守閣と呼ばれる建物の中の謁見の間──。大広間から下知として飛びかうのだ。


 そう、この世界、この大陸、この地一の優艶な美貌を持つとされる時と美と勝利……。チート能力と言わざる得ない力。妖力、魔力を持つ女神である。ジャポネ女王シルフィーの艶やかに濡れた唇が開いて下知が、この世界では常識外れた近代的な建物、城壁、城塞都市の中の後方にそびえ立つ──。和式のお城の中から響き渡る。


「一樹が先鋒──! 次鋒は健司でよろしいですね?」


「はい。わかりました。母上~。この一樹がウォン……。自分の父をさんざんコケに……。蔑ろにしたあのウォン(男)の首をとってご覧になれます」


「いや、いや、兄上にばかり良い思い。手柄は差し上げません。俺の率いる装甲弓騎兵は、この世界一だからね。ウォンとアイカの首は、俺が。俺が貰うよ。兄上……」


「馬鹿、健司。そうはイカン! イカンよ! 俺の鉄騎馬隊は、上杉公や信玄公のような、速き風の如きだから。あっという間に、敵将、敵兵達も蹂躙して駆除してやるから。お前の出番はない。ないよ。健司……」と。


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