第126話 アマゾネス達の願い(1)
「うわぁあああっ!」、「あぁ、あああっ!」
「きゃぁあああっ!」
「辞めてぇえええっ! ウォンー!」
「うぅ、うううっ」と。
健太の華奢な身体が勢いよく薄汚い毛皮、雑巾、ボールのよう何度も絶叫と言う名の叫びと悲痛な表情と共に軽く宙に舞い、ドン! と鈍い音と共に地面に落ちる。
それも一度、二度、三度と言う訳ではなく多々だ。
多々落ちる、落下をする度に二人の女性、ウルハとアイカが悲痛な顔……。この世の終わりを目にしたような悲惨な顔、容姿で絶叫、嘆願の叫びを交互に吐き、放つ。
それでも自身の頭上から血を流し、鬼のような形相、怒りをあらわにしている男、覇王ウォンは二人のアマゾネス……。
強引、力づくでも自身の物、妻、妃にしようとした麗しい女性二人の嘆願、命乞いを聞き入れない聞く耳はもたないのだ。
だって自身が先ほどから何度もボロの布切れ、蹴鞠のようにリズムよく蹴っる。踏んだ。蹴った。
だから軽々と宙に舞って落下──鈍い音を立てて地面に落ちた。
まあ、そんな状態に多々なれば自分に、この地最強の漢戦士、グラディエーターだと自負しているウォンに対して、先ほどまでのように自身の両目から大粒の涙を流し、平伏しながら。
自分に、健太の華奢でひ弱な肢体に対してこれ以上の荒々しい行い、行為、暴力をしないで欲しいと命乞いを多々してきても可笑しくないはずなのに。
当に本人である健太は一向にそんな弱々しく惨めな様子をウォンに対して一切見せることなどしない。
彼はよしとしないみたいだね。
「うぅ、ううう」と、健太の小さな口から悲痛な唸り声こそ漏れるものの。
「は、早く、二人とも逃げてよ。なにをしているの、早く……。早く逃げてぇっ! おねがい! おねがいだから二人とも逃げてよぉっ!」と。
相変わらず健太は自分の妃二人へと、この場から逃げて、逃走、落ち延びてくれと……だけではもうなく。
「……この場にいるみんなぁっ! 集落の人達も今直ぐ逃げておねがいだからぁあああっ! 僕の気力、体力……意識の方はもう限界にきているからこの場からみんな安全な場所へと一度逃げてぇえええっ! おねがい! おねがいだからぁあああっ!」と。
この殺伐とした場所……喧嘩、戦があった場所、古戦場にいつまでも呆然と佇んでいる集落の老若男女の民衆達や自分のためにグラディエーター達と喧嘩、戦をしてくれたアマゾネス達……だけではないのだ。
彼、男王健太が逃げろと告げているのはね。
そう、健太自身を嫉妬心から必要以上に荒々しい暴力、虐めと言われる行為を幾度となくおこなってきたグラディエーター達にも、自分の棍棒での奇襲攻撃により大変に気が荒々しくなっているウォン自身が、アイカやウルハだけではなく集落中の老若男女達に向けて荒々しい行為。
……だけですめばいいのだが。
健太の産まれた世界でも偶に新聞やワイドナショーなどを賑やかす一家皆殺しや御近所、集落の者達を根絶やし、皆殺しするような無差別的な猟奇殺害を頭に血が昇り冷静さを失っている男ウォンがしないと言う保証は何処にもないから。
「早く、早く、みんなもボォ~としないで、この場から逃げてよ。おねがいだからぁあああっ!」
健太は自身の喉が嗄れ、破れ、血が吹き出そうなぐらい大きく、甲高く叫び嘆願をする。続ける。
それがウォンの真っ赤に染まった紅色の瞳に映るから彼は、自身に怯えなくなった健太のことが憎くて仕方がない。
殺害、躯にしてやりたいと本気で思うくらい。
だからアイカとウルハの涙を流しながら健太の命乞い。
「ウォン! 頼むから健太にこれ以上酷いことをしないでお願い」
「ウォン、頼むから家のひとを殺さないでおくれよ。お願い。お願いだから。頼むよ」と。
最後には健太とウォンの真近くにいるウルハが、自身の夫へと残虐行為を鬼の形相で憤怒しながらおこなう。おこない続けているウォンの片足に抱きつき、しがみついて泣き叫びながら許しを乞いながら嘆願、命乞いまで始める。
だからウォンは自身の所有物にする予定の女性二人の健気な容姿、様子……。夫への愛情、忠誠心を凝視すれば猶更面白くはない訳で、健太への嫉妬心、憎悪が更に増し、募るだけだから。
「煩いアイカ! 黙れ! ……そしてウルハも俺の足から離れろぉっ! いくらお前達二人がこのチビの命乞いをしてこようが。俺はこのチビを見ているだけで胸くそ悪くなるから許さん! ……そろそろこいつを、このチビを躯にしてやる。だから俺の足を離せウルハー! 今すぐに!」
「いやだ。いやだよ。頼むから。家のひとを許して、堪えておくれよ。ウォン! うちはどうなってもいい。この身体を好きにしていいから。うちのひとの命だけはとらないでおくれよ。お願いだから。ウォン、頼む。頼むから」と。
ウォンの顔色が更に変わったことに気が付いたウルハは自身のこの優艶な裸体を差し出し、覇王の妃になるから。
自身の愛する少年健太の命だけは助け、救って欲しいと願い乞うのだが。
「ウルハ、煩い! いくらお前が泣き叫び嘆願をしてもこの生意気なチビの命だけは絶対に奪い躯。屍にしてやる……でないと俺の気がすまん」
「きゃぁあああっ!」
ああ、無情……。
いくらウルハが血の涙を流しながらウォンへと健太の嘆願、命乞いをしても覇王は男王のことを許さないと。
自身の足にしがみき、纏わりついて、主への暴力を制御しようとするウルハの裸体を己の足を強引に振って、振り払い。
そしてウォンは終えるとアイカの方へとチラリ視線を変える。
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