第113話 覇王ウォン! (1)

「うっ、うううっ。卑怯な……」

「何が。余所見をしている貴様がいけないのだろうに」と。


 自身の眼下、足元で、座り込んだまま、自身の脇腹──肝臓が、急所がある位置を悲痛な顔をしながら掌で抑え。


 自分のことを不意打ちに、肝臓のある位置へと回し蹴りを入れ、その勢いで腹部へも蹴り──最後には宙に浮き飛んでいる自分の体へと両腕、掌を握り込んで、そのまま地面へと向けて強打してきた男、ウォンへとウルハは唸りながら不満を漏らすのだが。


 当の本人であるウォンはと言うと不意打ち、卑怯千万──ウルハがアイカへと健太の件で……。



 そう、前回の話しの終わりのシーンではないが、ウルハがアイカがいくらこの小さな国、集落の女王、酋長、象徴だとしてもお構いなしに憤怒しながら自身の大事な物、者を元彼、婚約者、夫だと言っても過言でなかった男、ウォンと密談、密約、共闘して亡き者、排除をする予定だったのかと罵声を吐き、放ち、咆哮をしている最中に。


 ウォンが隙をつくっているウルハの背後へと忍び寄り無抵抗の彼女を一方的……。ウルハ自身が足、膝にきて安易に立ことができないほどの打撃攻撃で一方的に重傷を負わせることができたのだからウォンは歓喜! 嬉しくて仕方がないから自身の口の端を吊り上げケラケラと笑う。


「……それにウルハ、お前? 誰に対して怒声、罵声、不満を漏らしているのか分かっているのか? アイカはこの集落の酋長であり。俺達一族の長なのだぞ。そんな立場のあいつに対してウルハ、お前はなにを調子こえて憤怒しながら罵声を吐いているのだ。それも集落中の者達がほとんど集まる中で、酋長様に対して謀反にも等しい暴言、罵声を吐いているのだ。だから俺が長の代わりにお前へと折檻、お灸をすえてやったのだろうに。ウルハ、お前が二度とアイカに逆らい。楯突かないようにするためにな」と。


 ウォンは別に女王アイカに許しを得た。嘆願をされた訳でもなく。自己の判断で勝手に……。



 そう、自身が元男王あり。アイカの夫でもある健太を陥れ、亡き者にするために企てた邪な策、謀略が。この大勢人達……。



 集落の民、民衆達が集う中でウルハによってばれ、露見するのが不味いと恐れ、彼女が自分へと視線、身体の向きを変え、身構えファイティングポーズをとる前に不意をつく奇襲作戦へとでたのだよ。


 まあ、ウォン自身も武と力に関しては、オーク種族の漢戦士、グラディエーター達最強と世に称えられた上に、自分でも自負しているぐらいだから。


 いくらウルハが一騎当千の猛者、アマゾネスだとしてもウォン自身は負ける気はしないのだが。


 それでもファイティングポーズをとる。身構えたウルハに対して今のような一方的争い。


 ウォン自身が無傷でウルハを倒して攻略することは先ず不可能だから。女王アイカの許可、下知が下る前に無許可で不意を、卑怯千万な攻撃へと移り──。


 先ほど漢戦士、グラディエーター達相手に個々奮闘──一騎当千的な荒々しく、でも可憐なリズムあるステップを魅せ、舞ったウルハのことを、膝をつかすことに成功した。


 彼が、ウォンがウルハにもっともらしい意見を述べ、ケラケラと相変わらず苦笑を浮べ嘲笑い。歓喜できるぐらいにね。


 でもみんなも知っている。わかっている通りで、アイカと健太の涙や言い訳、嘆きが止まり。


「…………」と、元夫婦が仲良く驚愕──自身の両目、瞼を大きく開けた上に、開いた口が塞がらない状態へと陥って沈黙をしていた女王アイカではあるのだが。


 そう、悲痛な顔と声色で膝をつくウルハと、そんな彼女を上から見下ろすようにケラケラと嘲笑うウォンとの口論、言い争いを耳にすれば、やっと彼女も我に返り、沈黙から解放され。


「ウォン、いい加減にしなさい。誰がウルハを攻撃しても良いと許可を出しましたか? わらわは別にウォンにウルハを力づくで止めろ。制御するようには命令、下知を下してはいない筈だ! だから今直ぐウルハへの荒々しい行為は止めなさい……。特にウォン、貴方のしていることはこの集落内での決まり事、決め事に反していること、罰せられても可笑しくない事を民の目の前で平然としているのだから。ウォン! 今直ぐウルハへの暴力は止めなさない!」と。


 アイカは健太のこと、件で、大粒の涙を流しながら言い訳をする行為を辞め。


 この集落で古から代々守られてきた……。漢戦士、グラディエーター達が後世に血を残す、子孫を残すことが可能な神々しいアマゾネス達に対して荒々しい行為である暴力等……ドメスティックバイオレンスや夜這い結婚、凌辱行為を強く禁止して女性達を守ってきたのだが。


 この男ウォンはみなも知っての通りで、既に前科持つ者であり。女王アイカの義理の母であるこの小さな国、集落の女神でもあり。絶世の美女でもあるシルフィーやその他の若いアマゾネス達に対して夜這い結婚仕掛け、法に触れ、女王アイカの逆鱗に触れた実績を持つ荒々しい男、野心家の男だから。


 ウルハに対してアイカの許可もなく荒らしい行為、暴力へと安易に出ることなど造作もないことだから。


 この集落の女王、酋長であり。元カノ、婚約者、妻にも等しい女性だったアイカに荒々しく諫められようが。


 普通の家庭の夫婦喧嘩……妻が夫へと怒りをあらわにしながら不満を漏らす程度にしか聞こえないから。


 女王、酋長アイカの荒々しい諫めの声も右から入り、左耳から綺麗に抜ける状態になっている彼は──。


「アイカ! 煩い! お前は俺のしている事……。主人、夫である俺がしている事を黙って見ていろ! 分かったなぁっ!」


 とうとうウォンは、集落のみなが見ている前で、自分はの王さま、覇王なのだと言いきってしまった。

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