第112話 健太とアイカ(6)

 健太は本当に久し振り……。そう、この世界、この国、集落へと彼の、健太の想いや気持ちも考えず、許可もとらずに、こんな未開の熱帯雨林のジャングルへと初めて召喚された日、時にアイカへと不満を漏らし反抗をし、楯突いた時に大変に怒られた。叱られた。折檻、性玩具にされた日から彼はアイカへと不満を漏らす行為をやめ。


 自身の背負った星と運命……郷に入れば郷に従えと自分自身に言い聞かせ、悟らせて、夫婦仲良く円満に暮らし。この世界、この地、この小さな国に骨を埋める覚悟もできていたのに。


 自分のことを必要以上に執着しては苛める。おもちゃにする漢戦士達の行為は、自分の妻であるはずのアイカが元彼のウォンと密談し。邪魔になった他種族の健太をウォンが自身の知り合いに頼み。集落中の男戦士達へと健太のあること、ないことを言って周り。言いふらし。憎しみを募らせ、自分のことを荒々しく攻撃、苛めおもちゃにするように仕向けたと健太はアイカのことを……だけではなく。


 彼は自分の妻達を、全員を猜疑心、疑惑のある目で見詰め様子を窺っていた。


 そんな最中のこの事件だから健太は涙を流しながら「わっ、ははは」、ケラケラと、気が触れたように高笑いを始めだす。


「アイカ、殺せよ。殺せぇえええっ! 今直ぐ邪魔な僕を殺せよ。アイカ、お前は僕が憎くて仕方がないのだろ。だからわざわざ人目のつかないところへなど連れていかなくてもここでいいよ。ここで殺してくれよ。みなの見ている前で僕を公開処刑にしたらいいだろう」と。


 健太は逝った目──。焦点の合わない目──。気の振れたような目と形相、声色でケラケラと気持ち悪く高笑い……だけではなく。


 女王、酋長アイカに対して嘲笑いを浮かべ始めるものだから。


 アイカ自身も我に返り。彼女の緑の肌色が青、真っ青へと急に変化──。


「いや、いやぁ~。わらわは違う。違うのぉ~。そんな事、酷い事……。健太を苛め殺すような悪しき策等わらわは一度も考えた事、思案、実行などしていない。していなのよぉ~。ほ、本当に、本当だからぁ~。信じてぇっ!」と。


 気が触れた表情、声色で殺せ、今直ぐ殺せ、どうせ悪女、悪妻のお前、アイカが元彼、夫と寄りを戻す。元鞘に収まるために健太、自分が邪魔だから陥れたのだろうと奇声を上げ、呟き、告げてくるに対してアイカは絶叫交じり。涙まで浮かべ叫び、否定をするのだが。


「その話し……。家のひとが今した話しはアイカ本当なのかい?」


 自身の顔色を変え、ウルハがわなわなと身震いしながら問いかけてくるから。


 アイカは自身の従姉妹に対しても何も言える。告げる。言い返すことができない。


 只自分の両目に涙を一杯溜め、首を振るしかできない女王、酋長のアイカだった。


 ◇◇◇

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