第110話 健太とアイカ(4)

 何故か女王アイカは自身の元彼、夫健太……。今の今までウルハに抱きつかれ抱擁と熱いキス、接吻を受けていた健太の髪を彼女、アイカはね。力強く鷲掴みで握る。握り終えると。


 そのまま何故かアイカは健太の髪を強引に引っ張って──。彼をハグ、抱擁をして労り。労いをおこなっているウルハから強引に引き離し、地面の上にズルズルと引きずりながら歩行、移動を始めだす。


 だから健太は悲痛表情でアイカへと自身の髪を握る引っ張る行為を辞めて解放してくれと嘆願……。


 それも何故か健太は元カノ、嫁、お妃さまに自分はこの場から逃げ出すことをしないでアイカの背に着いて歩くから。自分の髪を強く握り引っ張りながらの移動を辞めて解放……。お慈悲……。


 まるでこの世から去る。消えていくような人物、者のような意味深な台詞を呟く。


「駄目だ。健太……。お前が嘘をついてわらわの許から逃げ出しては。わらわの懸念材料が残り。後顧の憂いを断つ事が完全に出来ぬから駄目だ。だからわらわが健太を直接、誰の目にもつかぬ。人気の無い所へと連れて行き。お前の思い。気持ちを成就してやるからな」と。


 アイカがこの小さな国、集落の女王、酋長らしく、何のお慈悲、情け心もない。凛と威厳のある声色で淡々と健太へと告げると。


「そうなんだ。アイカさんは……。よほど僕のことを信用していないし。きらいなんだね……。一応、これでも、僕は貴女の夫をした。演じたこともあったのに、アイカさんは僕に最初から愛情のかけらもなかったんだね」と。


 健太は悲痛な顔で大粒を流しながらアイカへと告げ。問うと。


「いいや、健太貴様の事を先程迄わらわはこの身が裂けて狂いそうなぐらい愛していたぞ、」


 アイカは大粒の涙を流す健太へと告げる。


「……でも健太、ある者が教えてくれた。お前がこの集落に来てから。揉め事、争いが絶えないから。健太はこの集落にとっての疫病神、いらぬ、不要な存在……。このままあなたを生かせば、わらわの酋長としての地位が危うくなると。わらわに告げ、教え、悟らせようとした者がいた。それでもわらわは家のひと、健太に限ってそんなことは無いと、たかをくくっていたのだが。先程の集落内の争い。内戦をわらわもその者も止める。鎮静する事が出来なかったのに。健太、あなたはあっさりと止めてみせ、偉大な男王へとなれる片鱗を長老達やシルフィーさんが言う通りにわらわにも見せてはくれたのだが。それと同時にわらわはあなた。健太の事が恐ろしくなり。畏怖してしまったよ。だからあの者がわらわの為に危惧してくれた。諫め、悟らしてくれた事が現実に起こると確信したから。悪いのだが健太、わらわの為に死んでくれお願いだ」







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