第109話 健太とアイカ(3)
それでも健太は何? 何のこと? 大変に情けない自分自身が一騎当千の猛者、アマゾネスであるウルハから歓喜の声を上げながら褒め称えてもらっているのか、彼にはわからない。理解ができていない。悟ることもできないでいるから。
「ひく、ひく……。えっ、ウルハさん。僕のなにが凄いんですか?」
健太は泣き、惨めな様子振る舞いで、元カノである女王アイカの足元に平伏し、しがみつき、自身の殺傷処分を願い出て、乞うていた。
でもウルハに急に抱きつかれ、その場で転倒──。
その後は今の通りで彼の現彼女、奥さまであるウルハから心温まる愛情一杯なハグに抱擁……。
そして『チュチュ』と彼はウルハから愛情こもった顔中にキス、接吻の雨嵐の御褒美を頂きながら絶賛、褒め称えてもらっている。
そんな和気藹々、中慎ましい様子を見て確認をすれば。
この場、争い。戦をしていた。
そう、今の今まで刹那な状態、様子……。
物々しく、殺伐としていた修羅化していた光景がね。
この場にいるグラディエーター達やアマゾネス達のにこやかな表情……。
各自各々が自身の眉間に皺を寄せ──目尻、口の端を吊り上げる行為を辞め。
自分達の全男王健太とウルハ夫婦のほのぼのとした様子を凝視しながら。
「わっ、ははは」
「何だ、ありゃ」
「俺らの、」
「儂らの男王は、自分の嫁さんに押し倒されているのに喜んでいるどころか。抗い。暴れているじゃないか」
「わっ、ははは」
「ふっ、ふふふ」
「本当だね」
「本当だよ」
「家のひとは、」
「健ちゃんは、」
「うちらの男王はウルハに押し倒され、接吻の雨嵐をくらい続けているようだから大変に困って暴れ、抗いているよ」
「うっ、ふふふっ、本当に。本当だ」
「ウルハ~。健ちゃんに接吻をするのはもうやめろ~。後が控えているんだから。あんただけが健ちゃんを独占、甘える行為をやめてうちらにも変わりな」と。
こんな不満が笑い声と共にでる。漏れる。飛び交うほどこの場、この殺伐としていた場が緩く、穏やかな場所へと変化してしまうから。
「ペッ!」
(面白くねぇ、帰るか)と。
ウォンが地面に唾を吐き、悪態をつきながら脳裏で不満を漏らし、踵を返すと。
〈ギュッ!〉
〈グイ!〉
「来い。健太!」と、女王アイカの荒々しい台詞が漏れると。
「痛い。痛い。離してアイカさん! 僕の髪を強引に引っ張らないでおねがいだから。頼む。頼むから」と。
「自分で立って歩くからアイカさん。逃げないから離してよ。僕の髪を頼む。頼むよ。おねがいだよ。最後にお慈悲をください。おねがいします」と。
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