第108話 健太とアイカ(2)

 健太は「うぅ、ううう」と更に嗚咽を、漏らし涙をポロポロと地面に落とし始める。


(や、やっぱりアイカさんは僕のことをもう既に夫だと思ってはくれてはいないし。僕のことを彼女は殺したいほど憎くて仕方がなかったんだね。だから僕が集落の男の人達にこんな……。他人に告げることができないような酷いこと、惨いことに遭っていてもアイカさんは……だけじゃない。エリエさんやプラウムさん、サラちゃんも僕のことが邪魔、憎くて仕方がないから彼等に虐め殺されるのを待っていたんだ。やっぱりそうだったんだ。悲しいな)と、健太は脳裏で思い。嘆けば。


「うわぁ~。うぁ~ん。アイカさん、僕のことがそんなにも憎いのならば今度こそ本当に殺せばいい。殺せばいいじゃないか。今直ぐにー! 早く僕のことを殺ころせ! 殺してくれよ、おねがいだから……。そうすれば僕は産まれ故郷の日本に魂となって帰る。帰還をするからぁっ! 今すぐ殺してよ。おねがいだ」と。


 女王アイカから彼女、妻らしからぬ愛情、情、情けも感じられないほどの冷たく、冷淡な言葉、台詞を直接もらった健太は、今までの自身の心の奥底で沸いて募らせていた妻達への猜疑心、疑惑が完全なものだと悟ると更に悲痛な表情へと自身の顔色をかえ涙──絶叫に似た叫び、奇声を上げながら自身の元カノ、妻、アイカに対して殺せ、殺してくれ、自分を処分してくれ。


 そうすればアイカに殺せ、今直ぐ殺傷処分にしてくれと泣きながら嘆願をする。始めるから。


 健太のこときれた普通でない様子……気が振れたように泣き叫び、奇声をあげ叫び、殺傷処分にしてくれと女王アイカに嘆願、乞う台詞、容姿──。


 元男王である健太の何とも言えない。言い難い。悲惨な容姿、様子を女王アイカ、ウルハ、ウォン、自称健太の妻達や彼を、元男王健太を虐めていた漢戦士達や新たに争い。戦に加わった集落のグラディエーターやアマゾネス達も流石に口論、喧嘩、争いをおこなう行為を辞め。健太の絶叫、奇声、嘆きに対して聞く、耳立て──目と瞳で悲惨な彼の容姿を追うから。


 各自各々が相手──自身の目の前に居る。立つ相手を殴る。蹴る、の暴行を加える行為をやめて佇み呆然、沈黙……。



 この場が、時が止まったような、静寂な空間が産まれてしまう。


 と言うことは?


 元男王健太が、この小さな国、集落の男王らしく……と言えば少々違うと言うか、変かも知れないけれど。健太は泣き叫び、絶叫、嘆くことで、女王アイカやウォンができなかったこと。


 彼女、彼が今直ぐ民達に争いをやめ──各自各々が家に帰宅をし、大人しくするようにと長、酋長、女王の権限を発動──発言、下知を下し。


 彼女、女王アイカの意に従い元男王候補にあがった男、ウォンも自身の仲間達やグラディエーター、アマゾネス達に直ちに、速やかに争いをやめ家に帰宅をするように一応は呆れ顔、声色で『やめろ』、『やめるんだ』と叫びはしたのだが。


 ウォンの熱意、心無い言葉、台詞、諫めを聞いても彼の友人、仲間、部下に等しい者達でさえ任務、策を遂行、成就するために聞き入れることもなく、自身の目の前に立ち塞がるアマゾネス達と荒々しく殴り合い。蹴り合いをおこうな様子、始末だったのに。


 この小さな国始まっていらいの騒ぎ、大惨事の中で一番弱々しい者、惨めな者であるはずの健太が威厳もなにもない形こそ悪い。恰好悪い。情けない容姿、様子ではあるのだが、アイカとウォンができなかったこの大惨事を完全に収集、止めてしまったのだよ。


 だから先ほどから女王アイカに逆らい。楯突き口論をしながら自身に群がるグラディエーター達を殴る。蹴る、で処理を続けてきたウルハ……。



 そう、今の今まで呆然、唖然、沈黙しながら自身の主がしたこと、おこなったことを凝視しながら無言で様子を窺っていた彼女が、自身の口を開き。


「す、凄い。家のひとがこの騒ぎ、争いを止めてしまったよ……」と。


 自身の大事な主、夫である健太が起こした軌跡を見る。見渡しながらウルハが感心した声色で言葉を漏らすと。


 ウォンが「あっ!」と声を漏らし。直ぐにウルハの後を追う。続くように自身の頭を動かし周りの様子を窺いこの騒ぎ……。この小さな国始まって以来の大惨事が収集、収まり鎮静化されたことに気がつく。


 だからウォンは、「チッ!」と舌打ち。悪態行為──


 その後は自身の脳裏で、


(くそ面白くねぇなぁ、俺の立てた策が失敗しやがった。これで俺が男王になる事が叶わなくなったし。俺の思い通りの集落にする事が叶わなくなってしまった。う~ん、さてさてどうするかな?)と。


 彼は今後の自分の身の振り方を思案する。始めだすと。


「あんたぁ~。凄い。凄いよ。あんた~。あんたがこの大騒ぎ、騒動を自分の力で鎮静したんだよ~。やっぱりあんたは私が星を見て見込んだ男だよ~」と。


 女王アイカの足元で平伏し、すがり。情けない。惨めな容姿、様子で殺せ、殺傷処分にしてくれと乞うていた健太に対してウルハが歓喜を上げ──星読みもできる彼女の夫選びの目に狂いはなく間違えはなかったと自画自賛しながら健太に抱きつきハグ。抱擁、甘え始める。




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