第107話 健太とアイカ(1)

「ウルハー! もうやめなさい! これはこの集落の酋長としての命令、下知よ。今直ぐこの場から立ち去り。自身の屋敷へと帰りなさい!」、

「……その他の者達も今直ぐ争いをやめて解散……。皆自宅へと帰ること分かったわね?」、

「……それと健太は、いつまでも泣かずに今直ぐ立ちなさい。あなたも男らしい大事な物が付いている男の子なのだからいつまでもメソメソ、弱弱しく、女の子みたいにしないで今直ぐ立ちなさい」と。


 何故か女王アイカは、自身の愛する夫健太を愚かにも集落のみながいる場所で愚弄、侮るような悪態をついてしまう。


 と、言うか?


 元彼、夫健太のことを女王アイカは完全に見限り捨てる。破棄すると決意。


 そう、アイカは酋長さまだから、この小さな国、集落のためならば邪魔な健太を追放若しくは殺害、処分することも構わないと心に決め。固く誓ったしまった彼女だから。


 自然と彼、健太に対して、妻としての情ある優しい態度ではなく。赤の他人対する接し方──情のない冷たい目、冷淡な瞳で弱い。軟弱な男の彼を、健太のことを侮りながら見おろし淡々と告げ、冷たくあしらうものだから。


「はぁ~、何を言っているんだ。アイカ! 家のひとのこの悲惨な様子を見てみろ! この悲惨で可哀そうな様子をね……。アイカ、あんたは、うちのひとの正式な妻なのに夫の悲惨な様子を見て涙を流しながら心を打たれ、主人を助けようと思わないのかい?」


 ウルハが悲痛な形相、声音で叫ぶように問いかけるのだが。当の本人であるアイカはと言うと?


「別にわらわは、健太の惨めな姿を見ても何とも思わない……どころか? こんな惨めで情けない男など邪魔。とっとと何処かに一生幽閉してしまうか。集落から追放、追い出した方が、わらわの両目にこの惨めで情けない姿が映らないからせいせいする」と。


 冷淡な目と瞳、冷たく薄ら笑いを浮かべ淡々と情けない男……。酋長、女王に不釣り合いな男などいらないから捨てた方がましだと、アイカはウルハと横たわり嗚咽を相変わらず漏らし、情けない。惨めな男でいる健太の前と集落のみながいる場所で平然と悪態をついて魅せるから。



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