第104話 ウルハ無双(4)
「ああ、分かったよ!」
「うちらも!」
「私等も!」
「健ちゃんのため」
「家のひと」
「お父ちゃんのために」
「パパの為にがんばるよ」と。
各自各々が頷き、納得──自身の彼、主、夫健太のためならば集落内の法に触れ、酋長、女王アイカに対して謀反、反逆者になろうとも構わしない。
女王アイカについていくのではなく、自分達のリーダーであるウルハについて健太と共にこの集落を出て一から自分達の集落、王国を建国するのだと言った気構えになる。
そう、この場にいる傾奇者、不良、ヤンキー姉ちゃん、アマゾネス達はなったから。
「うちらも行くよー!」
「ウルハに遅れるなぁっ!」
「頭にだけ良い恰好はさせないよぉっ!」
「リーダーに負けるなぁっ!」
「私等も健ちゃんの妻だぁっ!」
「女房だからぁっ!」
「酋長に楯突く事になろうとも」
「歯向かう事になっても」
「家のひとを助けるのだからぁっ!」
「健ちゃん助けるんだぁっ!」と。
各自各々が威勢のある声を出し──己や仲間達を鼓舞! 𠮟咤激励! 自身の気持ちを荒々しく高ぶらせながら。
自分達の頭、リーダーであるウルハが個々奮闘──。
一騎当千的な活躍をしながら舞い。踊っている物々しい様子の現場へと猪突猛進、突撃を決行──。
各自各々の目に、瞳に映るグラディエーター達の背に蹴りや後方から顔面へと握り拳を入れる。食らわし始めながら乱戦へと突入する。
だから不意をつかれ、攻撃を受けたグラディエーター達は、自身の顔を歪める者、悲痛な顔へと変化する者──。激痛の余りその場で自身の顔を両手で押さえ屈む者。その場で勢いよく倒れ込んだ者達多々──。
刹那状態へと変化、陥っているから。
「ぎゃぁあああっ!」
「うがぁあああっ!」
「うげぇえええっ!」と絶叫を上げる者達や。
「うぅ、うううっ」
「いっ、つつつ」と唸る者達。
「痛ぇよ……」
「いた、たたた……」
「痛い、痛い」
「痛ぇえええ、痛ぇよ」
と悲痛な声を漏らす者達が多々出て混乱、パニック状態へと陥ってしまうから。そうでなくても一騎当千の猛者、アマゾネスであるウルハ一人に手を焼いていたグラディエーター達なのに、新たなアマゾネス達の参戦……。
そう、ウルハ率いる強者達である傾奇者、不良、ヤンキー姉ちゃん達の参戦により完全に劣勢に陥る。陥ってしまうから。
(不味い。不味いぞ。このままで不味い事になる)と。
ウォンは瞬時に思う。思えばね。慌てて女王アイカの許へと走り。駆け抜けていくのだよ。
彼女がいる神殿に向けて──扉の戸を叩くためにね。慌てて走り抜けていくのだ。
だってこのまま、ウルハ達アマゾネス軍団を放置していれば漢戦士、グラディエーター達の敗北は誰が見て確認をしても必然、間違いないことになる。
そうなれば、ウルハ達が健太に対して嫉妬心を煽りながら憎しみを植え付け、憎悪を募らせ、蓄積させ苛めへと誘導、誘った張本人は誰なのか? 人物を検索し、割り出すことは間違えのないことになる。
そうなれば、必然的にウォンの名前も挙がってしまう可能性が大だから。そうなる前に、この集落の酋長、女王であるアイカへとこの物々しい様子、悲惨な様子、刹那な状態を見せ、悪いのは健太を心の病にかかるまで追い込み。彼が死んでも可笑しくないほど苛めた者達……。
おばば達長老からも、自分達が持つ嫉妬心や憎悪。心の病、ストレス発散、解消治療のために健太を苛める。おもちゃにすることに許可を得ている漢戦士達ではなく。
この小さな国、集落の最高権力者であるおばば達歴戦のシャーマン、巫女、アマゾネス達の意見、決めたことに逆らい。楯突き、謀反と変わらない行動を起こしたウルハと傾奇者、不良、ヤンキー姉ちゃん達アマゾネスなのだと女王アイカへと印象をつけないと、ウォン自身の邪な計略、策が露見してしまう。
だからウォンは慌てて女王アイカの住み暮らす、神殿へと向かい──。
そして到着をすれば。
「アイカ! アイカ! 大変だぁっ! 今直ぐ扉を開けてくれぇっ! そして早く俺の後に着いてきてくれぇっ! お願いだからぁっ!」と。
〈ドン! ドン!〉と。
彼は勢いよく、荒く、神殿の扉を叩き、酋長アイカを叫び、呼んだのだった。
だから男王以外の男禁制である神殿の開かずの扉が開き──。
「……ん? ウォン、どうしたの?」
自身の涙で濡れた瞳を手で、掌で擦り拭う。悲痛な表情の麗しい女王の姿が声と共に現れ、姿を魅せるのだった。
◇◇◇
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