第101話 ウルハ無双(1)
「あっ!」
「姉さんいたよ!」
「ほら、あそこに健ちゃんが!」
「うちのひとがいるよ!」と。
あちらこちら、至る所から若い女性、アマゾネス達の声が多々聞こえてくるよ。と、思えば。
「姉さん!」
「ボス!」
「親分!」
「番長!」
「頭ー!」
「ウルハ!」
「また今日もあいつら凝りもしないで、健ちゃんの事を虐めているよ……どうする?」と。
真っ赤な長い髪を逆立て、アイカ一族の中でも純血の者……。武に秀でた者にだけ生まれながらに許される紅の瞳を更に真っ赤──炎のようにメラメラと燃やしながら漢戦士達、グラディエーター達が円で囲うようにしながら嘲笑い。高笑い。苦笑、薄ら笑いを浮かべ漏らしながら立ち並び防波堤──。
そんなグラディエーター達の中から次から次へと入れ替わり、立ち代わりで暴力繰り返され──。泣きながら絶叫、奇声を上げ横たわる自身の愛する者、男、健太に対して殴る。蹴る。の暴力を繰り返すだけではなく。とても口では言い表すことなどできないような酷いこと、惨いこと、人為的な行為から完全に外れた行為……。
と、言っても、彼等漢戦士、グラディエーター達は人種ではなく、オーク種族なので人為的な行為と表現するのは可笑しいのかも知れない? 彼等は人ではなく、大変に荒々しい気性を備えた狂戦士の種族であるオーク種族なのだから人ではない。
だから人、人間、人種種の健太は彼等からしてみれば家畜、奴隷、性玩具なのかも知れないね? と、思わざるえないほどの荒々しく、惨く、酷い行為を集落の長老、シャーマンのおばば達からも健太のことを好きにしてよいと許可が下りた上に。この小さな国、集落の酋長、女王アイカとその姉妹達からの守護、庇護がなくなった彼、健太の今の様子は、とても言葉では言い表すことなどできない。できるような状態でないほどの物々しく、悲惨、惨い刹那状態へと陥っているから。
それを遠目から見詰めるウルハの表所は大変に険しいもの……。自身の麗しい顔の眉間に皺を寄せ、炎のように燃えいつもよりも赤く、紅色に染まる瞳の入った目の端を吊り上げ般若、鬼子母神へと変化、変わっているほどグラディエーター達へと憎悪をもらしている彼女、ウルハへの『どうする?』の訊ね。問いかけに対しての返す言葉、返事は──。
「もううちは我慢できない。いくらおばば達やアイカに逆らい。楯突く事になろうとも家のひとにあんな酷い事を平然とおこなう。あいつら。あの馬鹿どもを許さない……。だから今から皆殺しにしてやる……」と。
ウルハが呻るよぅに呟き決意をすれば。
「じゃ、義姉さん。うちは皆を呼び集めてくるね」と。
この集落の傾奇者、不良、ヤンキー姉ちゃん達の頭、リーダーであるウルハの決意と、今後の行動を聞けばこの場にいるアマゾネスの少女が、彼女に続くように言葉を漏らす。
「ああ、頼むよ。今から家のひとを守り。自由を勝ち取る戦を男達と始めるから来られる者達は来てくれと伝えておくれ」と、ウルハは少女へと言葉を返す。
「ああ、分かったよ。姉さん。じゃ、うちは行くね」と、少女はウルハへと言葉を返せばそのまま踵を返し──民家が多々ある方へと走り去っていく。
「あっ! ウルハ! 私もあの娘のように皆に声をかけてくるよ」
民家が多々ある方へと走るアマゾネスの少女の背を見ながら自分も彼女とは別の方向の集落へと向かい。健太のことを支持、支援をしたいと思っている。申している彼の元妻、女房達をまた違うアマゾネスの女性がウルハへと告げれば。
「あっ! じゃ、私も言ってくるよ。ウルハ。このさいだから私達の健ちゃんへと酷い事、仕打ちをする事に対して目を潰れてと申した長老達への不満がある者達を皆集めて、あの馬鹿な男達をしばいた後に。長老達へと健ちゃんの男王再襲名と近衛隊若しくは、親衛隊を組織して守れるように直訴をしようよ。その方が絶対に良いって」と。
また別のアマゾネスの女性がウルハへと提案を出せば。
「そうだね。そうしよう。もしもそれでおばば達が了承、黙認しなければ。うちは家のひとを連れてこの集落から出て、新しい地で一から集落を作り。国を興すよ」と、ウルハが物々しい意見と決意をこの場にいる者達へと告げると。
「うちもウルハと家のひとについてくよ」
「あっ! 私も」
「私もいく」
「うちもついていく」
「私等は健ちゃんの事が好き。今でも健ちゃんの妻だと思っているから。健ちゃんが他の土地で一からやり直したいと思う。言うのならば。私は健ちゃんの伴侶だからついていく」と。
ウルハの周りにいるヤンキー姉ちゃん達の中からも彼女の意見に賛同、同意をする女性の声が高らかにでると。
「あっ! うちも、うちも」
「私も」
「私もいく」
「うちもいくよ」
「あたしはウルハとあのひとについていく」と。
ウルハの周りから更に健太と彼女を支援、ついていくのだと歓喜、歓声が高らか、威勢よくあげるから。
この集落の長老、おばば達とシルフィーが危惧していたことが漢戦士、グラディエーター達ではなく。
この集落に絶対に必要な神秘で神々しい者達……。後世に自分達一族の血、子孫を残すことが可能なアマゾネス達の方で、おばば達長老の思いとは裏腹に起きてしまう最悪な事態へと進展しまうのだった。
◇◇◇
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