第96話 酋長の決断(6)

 だって彼は、女王アイカの従兄、幼馴染、元彼、婚約者、元夫だと言っても過言ではない深い間柄だった人物、男だったのだから。


 元カノ、アイカのことは重々承知している者、立場だから。


「ほら、早く言え。言ってくれ。アイカ、お前の本音、気持ちを」と。


 ウォンは自身の口の端を吊り上げニヤリと微笑みながら酋長、女王さまを更に急かし、追い詰めるのだよ。更にこんな言葉も追加、とどめを刺してくる。


「アイカ、お前が今から俺に漏らす言葉次第によっては。俺はあいつらと付き従う女達だけ連れてこの集落から出ていくつもりだ」と。


 そう、完全にこのの集落の長、酋長、女王に対して反旗、謀反に相当しい行動を起こし。永久の離別をするのだと彼は、ウォンは遠回しに女王アイカへと脅しのように告げてくるのだよ。


 そう、実は、この男ウォンが男王になれなかった最大の理由は実はでね。別にシルフィーに対して強引な夜這い結婚を決行したことだけが理由ではないのだよ。


 実は彼、ウォンは、この世界、世に、自分自身よりも優れた漢、人物はいないのだと鼻にかけるところがあり。オーク種族の太古から続いているの、神聖な女王やアマゾネス達を崇め敬い奉る。そして慕い尽くし、生涯をかけて奉公を続けていくと言う掟、まつりごとに対して彼は、幼い頃より不満を募らせ愚痴や嘆きを、当時の幼馴染、彼女、婚約者であるアイカに事ある毎に呟いていた。


 だから自身の義母やその他のアマゾネス達への強引、傲慢な夜這い結婚をいくら長老達が諫めても、素知らぬ顔で平然とおこないからへとこの小さな国、集落を変えよう。変化をしようとする。おこなうウォンに対して長老達や義母のシルフィー、女王アイカは危惧、彼に危機感を募らせ、集落追放の案は流石に従兄、元彼、婚約者に対してするのは忍びないと。女王アイカはウォンに対してついついと情け、情を入れてしまい婚約の破棄と男王へと二度となれぬような処置……。



 星読みもできるシルフィーがお勧めする異世界の人種の少年を召喚して己の婿に迎い入れ、古から伝わるを後続させようと試みていたのだが。


 またこの策士の男ウォンの邪な策略にかかり夫健太とは当分の間、同じ屋根の下で暮らすことができなくなったのと。


 人種のひ弱な自身の夫を、自分の庇護下に置くことができずにこのような失態……。



 女王アイカ自身が心から愛する彼健太が、を目指す男ウォンの巧みな言葉、話術で煽られ扇動された漢戦士達、グラディエーター達から荒々しい所業による虐めに遭う失態を犯してしまった。


 でっ、今度は、この小さな国、集落御自慢の主だったグラディエーター達か、何の特技、スキルレベルも持たないひ弱な人種の少年健太とどちらをとるのか選択をウォンは酋長アイカへと強引に迫り。早く回答、答えをだすようにとニヤニヤ薄ら笑いを浮かべながら急かす。


 それでもだ。アイカはやはり自身の彼氏である健太のことが好きだ。生涯二人で仲良く暮らしていきたいと思っているから。


 彼女の心の中にはもう既に元彼、婚約者、夫だと言っても過言ではなかったオークのグラディエーターの最高位に値する男ウォンへの想いは一欠けらも残っていないから。


「いや、それでもわらわは……」と。


 女王アイカは今にも涙の大粒を漏らしそうな顔で、愛する健太をチラリと見詰めながら自身に急かすように問いかける男への永久の離別の言葉を告げようと試みる。


「おい、アイカ。今にも泣きそうな顔をしながら難しく考えるなって……。要するにあれだ。ここでお前がを助けてみろ。あいつらはやっぱり酋長は噓つきだ。男王と離婚、離別をするのも全部嘘の上に。男王がこの集落の女達を独占、独り占めをする事を了承、黙認しているのだと思い。今度はアイカに対して不満に思うだろう。なぁ、その辺は分かるな、アイカ?」


 このまま女王アイカを煽れば、自身の夫である健太を助けるために彼女が強硬手段にでる可能性があるのと。


 これ以上時間をかけながらアイカを説得、洗脳を試みようとすれば、この集落の大自慢である前男王を支持する超強力なアマゾネス達が駆けつけてきて健太を救出する恐れがあるのと。


 そのアマゾネス達がいればこの小さな国、集落を他国、集落の侵略を平然で追い返せることが可能なのと、後世に強力、優秀な子孫を残していくことも可能だと、困惑、動揺が解けた女王アイカが気づく恐れがあるので、この策士の男は強硬策から、緩やか、温和な策へと切り変え──。


 女王アイカへと優しく、緩やかな口調へ変え話し、問いかけてきた。







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